人でなく電気・電子機器やコンピュータ関連の話だが、「相性」の問題は確かにあるようだ。正確には「ないとは言えない」だし、実際にはもっと正確な表現はあることが多いと思うが。

単に「相性」と言ってしまうから、原因が伝わらず、謎に包まれて、多くの人が思考停止して納得したり、逆に訝しむ人が出るのだ。実際にはちゃんとした原因があって、もっと正確な表現があるはずだ。ただ、それを簡潔に分かりやすく説明するのが難しいから、「相性」と言うのだろう。もちろん、言う本人が原因を分かってなくて、「相性」と言えば素人を誤魔化せそうだからそうしている場合もある。世の中ではそれが多いのかも知れない。

先日、使う機器によって測定結果の超低域が増えるあるいは減る問題を「相性」と書いたのは、まさにそれだった。そして、上に書いたように、原因が分かっていない。「原因が(分からないのでなく、)ピンポイントで突き止め切れなかった」と言うのが正しいが、まあ、似たようなものだ。

以下にその経過と仮の結論を書く。

現象

オーディオ再生系の周波数特性の測定に使う機器が違うと、超低域(40Hz付近)の振幅が変わる。現在の測定結果(現在の測定系を使用)は昔の測定結果(昔の測定系を使用)より3dB程度大きい。

原因の候補

  • マイク(Dayton Audio EMM-6)の劣化 (劣化して低域が増加するとは考えにくい)
  • 昔の測定系
    • マイク電源(Behringer PS400)の特性 (最初は候補に入っていなかった)
    • マイクアンプ(オーディオテクニカ AT-MA2, 以下、「旧マイクアンプ」)の特性
    • サウンドカード(ASUS Essence STX II)の特性
  • 現在の測定系
    • オーディオインタフェース(Focusrite Scarlett Solo 3G, 以下、"Scarlett")のマイクアンプの特性

調査と結果(概要)

  • サウンドカードのライン入力にテスト信号を入力して、特性を測定した。 → 問題なし。
  • Scarlettのライン入力とマイク入力にテスト信号を入力して、特性を測定した。 → どちらも問題なし。
  • 旧マイクアンプにテスト信号を入力して、特性を測定した。
    • Scarlettのライン入力に繋いで測定した場合 → 問題なし(低域はほとんど下がっていない)。
    • サウンドカードのライン入力に繋いで測定した場合 → 低域が下がった(40Hzで2dB程度)。
  • 昔の測定系と現在の測定系でスピーカーの音で特性を測定し、比較した。 → 昔の測定系では低域が減少した(40Hzで約2.3dB)。
  • マイク電源にテスト信号を入力して、特性を測定した。 → 外付けの直流カットコンデンサの容量によって特性が変化した。
    • ここまでで候補が出なかったので、新たに検討した。
      • 実際には旧マイクアンプ-サウンドカード間で現象が出ていたが、最初に気付いた3dBには足りないので、他にも要因があると思った。
    • マイク電源の回路を見てみたところ、単純にコンデンサ(47μF)で直流カットをしているようなので(→ 類似の回路: 基本的にはこれの上側と同様。ただし、2種類の電圧(12, 48V)用の回路が並列に繋がっている)、その影響を疑った。
      • 測定の前に、直流カットコンデンサとGNDへの抵抗でCRハイパスフィルタになっていると考えて、特性や定数を求めても(→ 計算ツール)、なかなか腑に落ちるものにはならなかった(47μFで40Hzをカットオフ周波数にするには、R(100kΩ)が大き過ぎた)。
    • 入力端子には電圧(48V)が掛かるから、そのままサウンドカードの出力端子に繋ぐと壊れる可能性があるので、まずは電源offで測定した。 → 問題なし(低域はほとんど下がっていない)。
    • 次に、マイク・電源間にコンデンサを入れて電圧をカットして測定した。 → コンデンサの容量によって特性が変化した。旧マイクアンプ経由でサウンドカードに入力した場合、20uFでは40Hzで2.6dB減少した(容量が小さいと、減少度はもっと大きくなる)。
      • コンデンサの影響が出るのでしたくなかったのだが、上で変化がなかったので試した。

測定結果のまとめ

  • サウンドカード → サウンドカード(ライン入力): 問題なし → サウンドカード単体では問題ない。
  • サウンドカード → Scarlett(ライン・マイク入力): 問題なし → Scarlettには問題ない。
  • サウンドカード → 旧マイクアンプ → Scarlett(ライン入力): 問題なし → 旧マイクアンプ単体では問題ない。
  • サウンドカード → 旧マイクアンプ → サウンドカード: 40Hzで2dB程度減少 → 旧マイクアンプとサウンドカードの関係に問題あり?
  • 昔の測定系と現在の測定系でスピーカーの音で特性を比較: 昔の測定系では40Hzで2.3dB程度減少(問題の現象(3dB減少)に近い) → マイクは劣化していない。
  • サウンドカード → コンデンサ → マイク電源(48V on) → 旧マイクアンプ → サウンドカード: 超低域が減少(コンデンサの容量による) → 旧マイクアンプの入力条件によっては問題がある?
    • マイク → マイク電源 → 旧マイクアンプ → Scarlettでは40Hzで1dB未満減少する? (現在の差は2.3dBなので、ほとんどなさそう)
    • マイク → マイク電源 → 旧マイクアンプ → サウンドカードでは40Hzで3dB前後減少する?

※マイク電源からScarlettのマイク入力に入れて測れば、マイクとマイク電源間の状況が分かったかも知れないが、Scarlettが故障したので今はできない。

仮の結論(推測)

  • マイク、マイク電源、旧マイクアンプ、サウンドカードそれぞれの間の結合状況(例: 直流カット処理やインピーダンス)によって低域が減少する。減少度が一番大きいのは、旧マイクアンプとサウンドカード間。
    • マイク → マイク電源 → 旧マイクアンプで1dB未満旧マイクアンプ → サウンドカードで2dB前後、それぞれ減少し、合計3dB前後の減少となるのではないか。(いずれも40Hzにて)
    • なお、旧マイクアンプとサウンドカードの入出力インピーダンスは公開されていない。
    • また、旧マイクアンプの周波数特性(仕様)は20Hz-20kHz -3dB、サウンドカードは10Hz-90KHz -3dBなので、充分にそれらの範囲内なのかも知れない。ただし、サウンドカードの入出力を直結した場合や旧マイクアンプをScarlettに接続した場合には低下しないので、「相性」の問題ではある。
  • Scarlettは問題ない。

その他

  • マイク電源は予想外に大雑把な作りだった。
    • 直流カットはコンデンサのみで行っており、アンプなどの能動素子は使っていない。
    • 2種類のマイク電源電圧(12, 48V)出力をスイッチで切り替えるのだが、それぞれの電圧を掛ける2つの回路がマイクの信号経路に並列に接続されていた。
      • そのせいで、パターンを追って回路を調べる時に戸惑った。
      • Off側の影響はないのかと思うが、分からなかった。
      • 個人的には2つの電圧で同じ回路・配線を使う(使えるように工夫する)方が綺麗でいいと思うが、そこは国民性なのか設計者の思想なのか。
    • それでも、マイク接続時の超低域の低下は1dB未満と推測される(しかも、これは電源と旧マイクアンプとの関係によるものが大きそうだ)ので、実用上は問題なさそうだ。
      • これは、マイクの静電容量が小さいとかインピーダンスが高いことと関係があるのかも知れないが、分からない。
  • 10uF程度のコンデンサでも、充電状態で端子をショートすると、「パチッ」と音が出る。びっくりした。
    • 耐圧(35V程度だった)を良く調べずに使ったので、それで壊れたのかと思ったが、幸い、膨らまず、煙も出なかった。
  • そもそも、数値的には3-4dB(約1.4-1.6倍)で、客観的にはすごく大きい訳ではないのだが、共鳴で強調された音が耳に悪さをしているのではないかと考えているし、超低域はいかにも耳にガツンと来そうなので、そういうちょっとした増加も気になって調べた。あと、グラフで見ると結構大きくなっているように見えることもある。それに、1.4-1.6倍といったら「50%増し」なので、本当に影響が大きいのかも知れない。

(11/24 12:41 若干加筆・修正)

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