先日 過大入力で壊れた、PCのサウンドカード(ASUS Essence STX II))の入力部(ADC)。なかなか諦め切れず、思い付いたことをちょっと試したらうまく行きそうだったので やってみたら、予想以上にうまく行った。
なぜ諦め切れなかったかというと、入力の制御(設定)は全然できないものの、入力信号のレベルが完全に0でなくふらついているため、ADCは壊れておらず、その前のオペアンプが駄目になっただけだと思われるからだ。それなら、そのオペアンプを交換すれば直るはずだ。
実際に、基板上のADCやオペアンプのピンを触ったら雑音(主に50Hz)が入力できたので、ADCは生きていそうなことが確認できた。
基板を見て信号経路を想像しているうちに、オペアンプは2種類(4580(写真: 白いテープの上の黒い四角2個)と5532(写真: 中央辺りの縦に2個並んだ金と銀の丸の右の黒い四角2個))使われており、壊れたのは入力ジャックに近いことから初段と思われる4580と推測した。が、それはピッチが狭い(1.27mm)EMP8というパッケージ(サイズ: 約5x3.9mm)で、交換はなかなか手強そうだった。このサウンドカードに添付されていたオペアンプを使うことも検討したが、DIPという大きいサイズなので それを使うのも難しい。
それから簡単な回路図を描き起こしたら、正しいかは分からないが、このボードは差動入力にも対応可能なようで、もったいないことに※入力がGNDに直結された-入力側にもオペアンプ(4580の1/2)が使われていることが分かった。
※このオペアンプは ただ"0"を出しているだけなのだ。
それで、4580が壊れたのなら、そのあとに信号を入れればADCに入力できるはずで、試したら本当にできた。
これは運が良くて、4580の出力のあとにカップリングコンデンサがあったので、(パターンカットなどせずに)手軽に その出力側(= 5532の入力側)に信号を入れられたからである。
予想どおり、壊れたのは初段だけで、それ以降のADCなどは無傷だった(ただ、どうしてか制御系もおかしくなっているが・・・)。
更に予想・期待したのは、壊れたのは+入力側(オペアンプ4580の半分)だけで、もう半分(入力がGNDに直結された-入力側)は生きている可能性があることだ。それなら、壊れた+入力側を使わないようにし、代わりに-入力側に信号を入れ、元の+入力側の出力の代わりにGNDを繋げば、極性は逆になるものの、ADCに信号が入れられると考えた。
やってみたら、細かくて苦労したり間違いもあったが、なんとかできて、ちゃんと入力できるようになった!
壊れたICの同じダイ上にある別の部分(半分)が生きているというのは、なかなか運のいいことだ。入ったのが雷とか100Vではないので、ダイ全体が破壊された訳ではないからだろう。
もうひとつ幸運だったのは、入力切り替え用リレーがデフォルト状態でライン入力側になっていたことだ。もしこれが開放や もう一個の入力(フロントパネルのマイク)側だったら、リレーもいじらないといけなかった。
修理はほとんど改造で、オペアンプの脚を切って持ち上げて線を繋ぐなど、大変エグい(「魔修理」?w)。細かくて脚にしっかり半田付けするのが困難だったので、強度や耐久性には不安がある。
4580のピン3本を(半田が剥がせなかったので)切って持ち上げ、1本(壊れていない半分の入力端子: 元のGND→-入力)に信号入力を繋いだ。残り(壊れた半分: 元の+側の入力と出力)は入力信号に影響を与えないように持ち上げた。本来は入力をGNDに落として安定させたかったのだが、切って脚がほとんど残らなかったので面倒になって止めた。まあ、壊れている部分だから よもや発振はしないと思う。
謎なのは、新たに-入力側になったほうの、GNDに接続したカップリングコンデンサを直結すると(図: 右端の×の部分)、大きな雑音が出ることだった。差動入力の関係なのか、僕には良く分からない。元からそうなのだが、絶縁する以外にGNDからの入力?にもカップリングコンデンサを入れる意味が分からない。差動入力なので同相の雑音が除去されるが、直結するとそうでなくなるということだろうか。
ただ、+側もそうだが、このコンデンサが、時々測定値が変になることに関係している気がした。あと、電解コンデンサなので入力した音は悪そうだ。
特性を測ってみると(やっぱり、極性は逆になった)、(疲れたので詳しくは見ていないが、)大丈夫そうだ。振幅は真っ平だし、位相は見慣れた形だし、歪みも悪くない。
- 過大入力で壊れたと思われる、初段のオペアンプ4580のあとのコンデンサ(CE50, CE51)の出力に音を入れたら(下からの線)、ADCに入力できると考えた。
- 左のアイデアの実装: 初段のオペアンプのあとのコンデンサの出力に音を入れた。
- 左のアイデアの結果(左: ADCに入れる信号生成, 右: ADCで取得した信号のスペクトラム)
- 本格的に修理した。: 両チャネルの初段オペアンプの半分を入れ換えた(正確には、壊れた+入力側を使わなくし、-入力側を+側に使う)。
- 本格的に修理して: オペアンプ4580の壊れていなさそうな、GND側の半分を+側にして音を入れてみた。
- オペアンプ周辺の拡大: ピンを3本持ち上げ、1本(元のGND→-入力)に入力を繋いだ。
- 修理後の振幅特性 (青: L, 赤: R)
- 修理後の位相特性 (青: L, 赤: R: 2本が重なっている)
- 修理後の歪み特性(THD) (青: L, 赤: R)
さすがに疲れたが、今回もうまく行って気分はいい。近頃は「ハード屋さんかな?」という稿を書こうとするくらい(あとで書く予定)、(仕方なくw)ハードもいろいろやっている。全部うまく行っている訳ではないが、半分前後は思ったとおりになっている。でも、半田付けは好きでない※から、そういうのがないものをメインにしたい。が、そういう楽なものはほとんどない。
※火事の危険があるから神経を遣うし、うっかりすると火傷するし、半田に含まれる鉛の蒸気を吸うと、あるいは、手などを経由して体内に入ると絶対に身体に悪いと思うからだ。ただ、世の中で随分多くの人が未だに鉛フリーでない半田を使っていると思うけど、その害について聞かないということは、半田を溶かした時に出る煙ほど多くは蒸発していないのか、それほど毒性が高くないのかと想像する。
でも、やっぱり嫌だ。子どもの頃は無頓着に使いまくっていたが、その害がないのが不思議だ(いや、実は充分にあったりしてwww)。
→ いかに半田付けが嫌なものかについての素晴らしい「あるある」。 (3/21 8:52)
(3/21 5:29, 9:49 少し加筆・補足・修正)
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