昨年末から延々と続いている、聴いていて起こる耳の問題(耳閉感など)を解消または緩和するためのオーディオ系の改良に ようやく目処が立った感じで、一安心している。

それまで諸悪の根源(耳の問題の原因)と考えていた(実際に悪かった)大容量の電解コンデンサを「撤廃」したら、概ね耳の問題が起こらなくなった。ただ、電解コンデンサだけでなく、小容量のマイカコンデンサも悪かった可能性が高い。というのは、別の目的※で外したら*、棚ぼた的に音が良くなったからだ。

※それを使う回路(フィードバックの超高域抑制)のカットオフ周波数が計算と合わない原因は これの容量がおかしいためではないかと疑ったため。ただ、外してもカットオフ周波数のズレは解消しなかった(測定時に付いていた他の要素の問題だった)ので、実際には原因ではなかった。が、そもそも設計の時点で適切な容量でなかった(小さ過ぎた)のは確かなので問題ない。

*片方の脚を抜くとか切ったりして一時的に無効にして試したかったものの、工具が入りにくいところにあるため面倒になって無慈悲な鉄槌を下した思い切って破壊的に外した(ラジオペンチで ひねって「ブチ切った」)。

再利用できなくなっても良いか迷ったが、以下に書くようにマイカは音が悪いことが分かったので もう使うことなどなく、怪我の功名ですらある。

マイカコンデンサは高価なせいか 音が良いとされ、一部のオーディオ界で珍重されているが、誘電体吸収(簡単に書くと、コンデンサが放電し切らずに電荷が残ってしまう現象。 → 参照1, 2, 3)が大きい(電解コンデンサも大きい)ことによる弊害を考慮しているのか怪しい。※ そんな特性で いい音が出るのかも怪しい。実際、歪みがひどい(特性の良いセラミックよりも悪い)という感想を目にした。*

まあ、音が良いと思う・感じる人は使えば良い。が、(他の部品もそうだが、)○○の一つ覚え的に、考え・検証なしに、あるいは、思い込みで採用するのは愚の骨頂だ。

※あと、想像の域ではあるが、マイカコンデンサの構造はセラミックコンデンサに似ているから、それと同様の問題(電圧に依存して電極が動く・振動する → 容量が変わる)が起こって、音が良くないのではないだろうか。

*マイカコンデンサの歪みについての情報があった。: 「オーディオ設計の世界」の「キャパシタの発生する歪」の「―マイカを5種―」の項や他の項によれば、マイカは概ね歪みが良くない結果である。更に、左の"(5) SOSHIN CML2YB 132J3 (1300pF J)"の項に以下のような記述がある。

歪波形を見るとクロスオーバー歪のように、印加電圧が反転する所で段差が見えます。何個測っても同じなので、マイカの特性か?

そのページには「歪波形」の図は載っていないが、時間軸の普通の振幅の波形を示しているとすれば、この「段差」は誘電体吸収で起こっているのではないだろうか?

いずれにしても、歪みに関しては、マイカコンデンサは普通のフィルムコンデンサに負けていることが分かる。それどころか、一緒に比較されているセラミック(村田chip型)にも負けているので、上に挙げた感想は正しそうだ。

では、実際にアンプのフィードバック回路にマイカコンデンサが使われている場合に どのような問題が起こるかを推測すると、以下のようになる。

  • 誘電体吸収のためにアンプの出力からフィードバックされた電圧が残り、それがアンプの負入力に入って、アンプの出力を増大させるか減少させる。 → 出力が歪む。
    • どちらになるかはコンデンサの出力の符号によるが、入力の逆になるとすれば、出力を増大させると思われる。
    • すると、大きくなった出力が またマイカコンデンサに入り、更に出力が大きくなるのだろうか。
      • ただ、フィードバックコンデンサのために直流近くのゲインは小さいので、それほど大きくならないのか。
  • 誘電体吸収の他に、上述のセラミックコンデンサのような容量変化による歪みがフィードバックに加わり、アンプのゲインが歪んで出力も歪む。
  • 誘電体吸収で生じる(残る)電圧は入力(アンプの出力)よりも低いだろうし、フィードバック抵抗で分圧されるのでレベルは小さくなるが、普通の歪み率の0.01%のようなオーダーは超えそうだ。

なんでこんなものをフィードバック回路に使ったかは分からないが、後述のように、このコンデンサを位相補償用と考えて(誤解して)、それなら容量が安定している(という定評の)マイカがいいと考えたのだろうか。あるいは どこかからのコピペを「良さげに変えた」(容量を小さくすればカットオフ周波数が上がって、帯域が広くなる)※とかか。

※似たようなことは、フィードバック中の大き過ぎる電解コンデンサ(MUSE ES)にも言える。データシートの例では10μFや22μFなのに、なぜ100μFもの大きなものにしたのだろうか? 大きいほうが(カットオフ周波数が下がって)帯域が広くなって良さげだと思ったのだろうか?

更に、その電解コンデンサに小さいコンデンサ(0.1μF, WIMA)が並列になっているのも解せない(電源では良く見るが・・・)。高域まで安定してフィードバックを掛けるようになのかも知れないが、自分で部品(コンデンサ)を決めるのだから、あらかじめ仕様・特性を確認して、使用する帯域でインピーダンスが充分に低いものを選べばいいのだ。

実際、MUSE ESのインピーダンスの実測例では2MHz辺りまで低いから、全く充分だ。一方、並列のWIMA 0.1μF MKP2の実測例では やっぱり2MHz辺りが谷になって居るものの、その手前(例: 100kHz以下)のインピーダンスはMUSE ESより随分高い。全然意味ない気がするがなあ・・・

間違っている!: 後述のように、これは位相補償用でなく超高域のゲイン抑制用なので、容量が ものすごく安定な必要はない。カットオフ周波数が可聴域の充分上になっていれば、(温度などで)多少上下に動いても大きな問題はないはずだ。容量の安定性を求めるにしても、そういう特性(や音)の良いフィルムコンデンサが使えるはずだ(そこでWIMAを使われる可能性もあったが)。

いずれにしても、偶然の結果ではあるが、マイカを捨てて音が良くなったのは とても喜ばしい

あんなの飾りです?w

 

以下、(ほとんど自分のために、)今までの経緯など(「何で やり出した?/これをしている?」)を整理する。

全体の流れ(経緯)

  1. 音楽を聴いていると耳の問題(例: 耳閉感, 音が聞こえにくくなる)が起こることがある。
    1. 出来の悪い機器(試用した某DACと手持ちのScarlett Solo Gen. 3)で耳の問題が起こったので、原因(それらに特有の雑音が原因と考えている)を調べようとした。
      • 目星は付いたが、下の作業を始めたので未完了
    2. そうこうしているうちに(?)、通常の再生系でも起こるようになった。
      • 結局、通常の再生系の出来も悪いことが分かった。使用状況や耳の調子で問題が起こるようだ。
    3. 原因を調べ、対処しようと思った。
      • 最初はASUSのサウンドカード(Essence STX II。以下、ASUS)のDAC部の劣化だと思った(歪み率(特に2次高調波)に左右差があったので)。 (↓2へ)
        • 結局、歪み率の差は音質には影響はなさそうで、DACチップかI/V部の劣化・不調と推測している。それでも仕様の範囲内で、実際には問題ではないのかも知れない。
      • 上と前後して、耳の問題に関係あるかと思ってDACのフィルタ(sharpとslow)を比較した。
        • それまで使っていたslowよりsharpのほうが正しいことに気付いたものの、(44.1kHzの)sharpは耳に問題が起こるため、96kHzにデジタルのLPFを追加した。
        • が、処理が複雑で嫌なので止め、なぜか問題の起こらない96kHzのsharpにして音の良いアップサンプラを選んだ。
          • ついでに、部屋の特性補正フィルタも簡素化した。
          • この設定にした少しあとに、DAC出力にコンデンサを追加することを思い付いて下に繋がる。
  2. ASUSのDAC部の対処・改良: 目処が立った。
    1. 電源・電解コンデンサの劣化?: おそらくなし。
      • 電源の問題なら左右差は起こりにくいため。
      • 出力のカップリングコンデンサと電源のバイパスコンデンサの劣化もなさそうだった。
    2. 出力カップリング回路(容量の大き過ぎる電解コンデンサ)が悪いことが分かった。 → DC(direct coupling; カップリングコンデンサなし)で出力して外部にカップリング回路を付け、元の回路を無効化した。
      • クラシック音楽を聴くと(再生すると)耳閉感が起こり、ポップ音楽にすると途端に治まり、クラシックに戻すと再発することがあったのと、その前後に、大きいカップリングコンデンサは時定数が長いためにドリフト(周期の遅い振幅の変動)を起こることがあるという情報を目にしたのが、大きな電解コンデンサを疑う切っ掛けになった。
      • その後、長い時定数以外に、最初に書いた誘電体吸収の問題もあるので、電解コンデンサ自体が悪いことも分かった。
    3. ついでに、出力切り換えのリレーを直結にしてみた。
      • 耳の問題でなく、わずかにでも音の経路の接触抵抗を減らすため(気分の問題)。
    4. 大分良くなったが、まだ耳閉感が起こることがあるので、アンプも疑った。 (↓3へ)
  3. アンプ(BA3886, 自作(キットを改変))の対処・改良: オリジナルのキットの設計は「ほとんど駄目」だったが、改良(修正)して ようやく目処が立った。 ← 今ココ
    • DCサーボ部(基板)が悪い。
      • 設計が悪くて性能が不充分で、弊害のほうが大きい。
      • そもそも、出力のオフセット(直流)をカットするだけのために、常に信号に手を加えるのはアホらしい。
    • フィードバック回路の設計が悪い。
      • 超低域抑制回路(DCサーボの代わり)が悪い。: 大き過ぎる電解コンデンサ(カットオフ周波数の設定)と音が悪そうなWIMAを使っている。
      • 超高域抑制回路も悪い。: 高過ぎるカットオフ周波数の設定と、誘電体吸収特性が悪く 音が悪そうなマイカコンデンサを使っている。
        • 説明書には このコンデンサを「位相補償用」と書いてあるが、何の位相を どう補償するのだろうか??
          • LM3886のデータシートには そんなことは書いてないが、「(高域のゲインを)補償するコンデンサ」とあるのを誤解したのか。以下に引用する。 (記号は回路図を参照のこと)

External Components Description

11. Cf(1) Compensation capacitor that works with Rf1 and Rf2 to reduce the AC Gain at higher frequencies.

    • Zobelフィルタも今一つ。
      • カットオフ周波数がフィードバック(超高域抑制)と合っていない。
      • 音が悪そうなWIMAを使っている。

現状の設定・構成

  • ASUSのDAC部
    • 出力のカップリングコンデンサ(AltCC): 0.44μF (UPZ 0.22μFx2) (元: FG 220μF)
      • カットオフ周波数: 7.2Hz (後段の入力抵抗が50kΩの場合) (元: 推定0.015Hz (抵抗: 推定50kΩ))
      • ※可聴域での位相ズレを減らすため、2/7に容量を2倍に増やした(元: 0.22μF)。それに伴い、カットオフ周波数が1/2になった。
  • BA3886アンプ
    • DC(direct current)サーボ基板: 撤去
    • フィードバック回路
      • 超低域抑制コンデンサ(AltFBC): 9.4μF (ECQE 4.7μFx2) (元: MUSE ES 100μF + WIMA 0.1μF)
        • カットオフ周波数: 7.1Hz (抵抗: 2.4kΩ) (元: 0.66Hz)
      • 超高域抑制コンデンサ(AltHCC): 50pF (UPZ 100pF/2) (元: マイカ 15pF)
        • カットオフ周波数: 103kHz (抵抗: 22kΩ) (元: 343kHz)
    • Zobelフィルタ
      • コンデンサ(AltZobel): 0.11μF (ECQE 0.22μF/2) (元: WIMA 0.1μF)
        • カットオフ周波数: 145kHz (抵抗: 10Ω) (元: 159kHz)

注: 上では複数のコンデンサを組み合わせているが、そうする必要はない。単に、購入する時に最適な値が分からなかったため、組み合わせて ある程度の種類の容量を実現できるようにしたためである。また、少ない種類で複数の用途に使うことも考慮した。

実際、AltFBCは当初の計画の2倍にし、AltHCCは当初の3/2倍(3個直列→2個)にし、AltZobelは当初の1/2にした。また、ECQEをAltCCにも試したかったので、別に0.1μFを買う代わりにAltZobelの0.22μFの予備を使った。

お金をふんだんに使うなら、それぞれぴったりの容量のコンデンサを買って使えば1個ずつにできる。

現状の回路図

BA3886(改良版)のアンプ部の回路図: AltFBC, AltHCC, AltZobelが今回改良した箇所

現状で感じている効果

従来より音が良い感じになり、耳の問題は ほとんど起こらなくなった(ただ、最後にも書くが、出やすい時間帯・状況があるようだ)。

今回も、いろいろなコンデンサ(AltFBC, AltHCC, AltZobel)を換えたり容量を調整するたびに音が変わったが、AltHCCのマイカコンデンサを除去した時が一番変わった気がする。高域や余韻のような細かい音の再現性が良くなり、耳が痛くなること、あるいは、キツく感じることがなくなった(音源や体調に起因する場合を除く)。

以下に、マイカコンデンサを除去したあとの印象・聴感の例(試聴中のメモより)を挙げる。

  • 「原音に忠実」に近づいた(原音は分からないので、正確には そういう「気がする」)。
  • 高音のキレがいい、あるいは、鋭い、あるいは、クリア(しかも うるさくない)。
  • 音がいい。シンバルやハイハットの音が いい。リアルな感じ。
  • 余韻のような細かい音が今までより ちゃんと(例: はっきり)聞こえる。
  • 今まで定位が悪かった(左右どちらから出ているか良く分からない)※、1kHz辺りの正弦波が少し良くなった。
    • ※想像だが、部屋での反射と僕の耳の問題(左右の特性に差がある)が関係していると思う。
  • 何となく、耳が痛くなる(高音のキツさ?)のはマイカコンデンサが悪かった気がする。外してから起こっていないし、音が いい。

動作確認と特性の測定

AltFBC, AltHCCの動作確認のため、アンプ単体(DC接続, ボリュームなし, アッテネータなし, アンプ入力: -30dBFS)での振幅-周波数特性を測定した。グラフでは、カットオフ周波数は線が水平のカーソル(-3dB)と交わるところで、左右チャネル共に低域(← AltFBC): 約7Hz, 高域(← AltHCC): 推定約94kHzである。それらは理論値の7Hz, 103kHzと合うか近いので、AltFBCとAltHCCは正しく動作している。

ちなみに、カタログなどで良く見る「周波数特性」(再生可能な周波数帯域)は、BA3886単体では、グラフより、例えば 20Hz-28kHz +0, -0.5dB と書くことができる。特に狙った訳ではないが、一応 可聴域をカバーしている。が、これ自体は それほど意味がなく、位相や歪みのほうが重要だと思う。

まあ、それらも、補正フィルタを入れたりすると豹変してしまうのだが・・・

なお、AltZobelはカットオフ周波数が145kHzと高いため、手持ちの機材では測定不能(下で追加検討)である。

次に、いつも測っている特性(振幅, 位相, 歪み率, 雑音(ノイズフロア))を測定し、改良前と比較した。更に、小・中・大出力時の歪み率を比較した(上の2番目以降のグラフ)。

以前にも書いたように、一般的な特性(振幅・位相・歪み)に、改良前後で聴感の変化の原因となりそうな差は見られなかった。※ 大出力時の超低域(30Hz以下)の歪みの増大は ほとんどなくなったが、それが聴感に影響しているかは疑問である。

※位相(ズレ)は悪化しているものの、改良後は音が良くなったと感じているので、大きな影響は ないようだ。そもそも、上述のように、聴く時には部屋の特性補正フィルタを入れていて、位相のズレは ひどいものになるから、こういう自然なズレ(時間的な遅れ)は余り影響がないのかも知れない。

以下に特記事項やコメントを書く。

  • 振幅の比較
    • 改良後に低域が下がっている※のは、AltFBCの影響である。コンデンサの容量を増せば増すほどカットオフ周波数が下がって改良前の平坦に近付くが、容量を大きくし過ぎるとドリフトが生じたり(推測)、コンデンサの音の影響を受けるだろう。*
      • ※グラフの縦軸は拡大しているので、見た目ほど ひどくはない。
      • *もちろん、電解コンデンサを使ったら・・・
    • 改良前後に高域が少し下がっているのは、測定時に使用したアッテネータの影響と思われる。
      • 改良前はサンプリング周波数が44.1kHzだったので、下がる量が若干大きい。
      • 改良後のものには更にAltHCCの影響があるが、このグラフには出ていない。
      • なお、AltCCを2倍にしたものにはアッテネータを入れていないため、高域が少し良くなっている。他の測定結果も、アッテネータがない場合には この辺りにあると推測する。
  • 位相の比較
    • 改良後に低域のズレが大きいのは、振幅と同様にAltFBCの影響である。振幅と同様に、容量を増せば増すほど改良前の平坦に近付く。
      • 振幅と違って位相のズレは結構大きく、看過できない感じがする。
    • カップリング回路(AltCC)を付けてAC接続にすると(薄水色, 薄ピンク)低域でのズレが大きくなるのは、コンデンサが増えるためで仕方ない。
      • → やっぱり、ちょっと気に入らないので、容量を2倍にしてカットオフを下げてズレを減らすことを検討・試行している。 (2/7 9:34) → 採用することにした。低域の位相のズレは、DCとそれまでのAltCCの間辺りになった。グラフを、その測定結果を追加したものに交換した。 (2/9 10:56)
    • 改良後の高域の位相が少しズレて居るのは、AltHCCの影響だろうか。
      • ↑高域の位相は測定のたびに変動するので、余り信用できないようだ。
  • 歪み率の比較
    • 注: AC接続の測定結果はAltCCの容量を2倍にする前(0.22μF)のものである。 (以下も同じ)
    • 改良後のDC接続時(水色, ベージュ)の中低域(約800Hz以下)での歪み率の増大はADCのカップリング回路の問題と考えられる。同じ出力でAC接続(AltCC)した場合(薄水色, 薄ピンク)には増大は起こらない。
    • 一方、改良前(青, 赤)にあった超低域(30Hz以下)での歪み率の増大は起こらなくなった。
    • なお、今回の測定の高域(約4kHz以上)の歪み率が増えているのは、今回は前回の2倍のサンプリング周波数のため、高調波を求める帯域が広がったためである。
      • 例えば、以前は4kHzでは5倍高調波までだったが、今回は最大12倍まで求めることができる。
  • 雑音の比較
    • アッテネータを通して測定しているため、実際の値は約12dB大きいため、それほど雑音レベルが小さい(≒ SNRやダイナミックレンジが大きい)とは言えない。ざっと見て、-100から-105dBFS(ざっくり計算すると30μV辺り?)くらいだろうか。
    • 50Hzの山は電源からの雑音、15kHz他の山はPCからと思われる。褒められたものではないが、スピーカーからは聞こえず、耳に問題を起こさないようなので、良しとしている。
  • 出力と歪み率
    • 通常聴いている時の出力・特性は、グラフでは約19mW(青)辺りである。

ところで、改良前後で特段の差がなかったからと言って、測定が不要ということは全くない。それは、例えば「*から放出される放射性物質は極めて微量なので、監視する必要がない」と言い張るのと同じことだ。少なくとも、どこかで間違って とんでもない特性になっていないことを確認する必要はあるし、今回の作業で交換したコンデンサが ちゃんと働いているか・カットオフ周波数が想定どおりか確認する必要はある。

とは言え、手持ちの機材の限界のために測れないものもある。※: AltZobelのカットオフ周波数はASUSの上限のサンプリング周波数の192kHzでは測れない。AltHCCは傾きを延長してどうにか推定できるが、無理がある。

※ここでも、「測れないから まあいいや」と済ますのは良しとしない。

その後、測る方法を考えた。: それぞれのコンデンサ(元のコンデンサ)に並列に同じくらいの容量のコンデンサを追加してカットオフを下げて測れば 以下のいずれかの結果が得られるはずで、元のコンデンサが働いているかが確かめられる。

    • 元のコンデンサが働いているなら、カットオフは合成した容量のものになる。
    • 元のコンデンサが働いていない(例: 断線, ショート)なら、カットオフは追加した容量のものになる(断線)か全く変わらない(ショート)。

この方法でAltHCCは確かめられたが、AltZobelは無理だった。というのは、カットオフが下がってもアンプのパワーバンド内ならアンプが頑張って振幅を保つからだ。

それで、AltZobelのカットオフを下げた状態(AltHCCは そのまま)でコンデンサまたは抵抗の両端の電圧を測れば、カットオフ周波数以上で電流が流れるため、電圧(振幅)が変わる(コンデンサは下がり、抵抗は上がるのではないか)だろうと考えたが、ここまでで力尽きた(面倒になったw)ので保留にした。代わりに、コンデンサの脚の根本(本体の近く)と基板のランドの導通をチェックすることで、とりあえずは良しとした。

写真

残件

  • アンプの仕上げ
    • 代替コンデンサの固定や脚の絶縁など。
    • 測定結果などのまとめ
    • 資料の作成・更新
  • ASUS DAC部の残り(続き)
    • DC(direct coupling)出力端子を付ける。
    • カップリング回路(コンデンサ)のアダプタを作る。 (← こんなイメージ)
      • DC出力とボリュームの間に入れる。
    • 電源on/off時ミュート機能をDC出力にも有効にする。
      • DC出力には元々のミュート機能が効かないため、電源off時に小さいポップ音が出る。
  • 耳の問題が起こる原因調査の続き
    • 今回対処した(大きい電解コンデンサによる)超低域の変動(ドリフト)以外に雑音も原因だと考えているので、その検証を再開する。

その他(気付いたこと・メモ)

  • いくらDACやアンプを改良しても、朝(朝食後?)に、ごく軽い耳閉感・唾飲み時の違和感が出やすいようだ。
    • 血圧や季節(室温)が関係ある? 疲れは関係ありそう。
      • 耳閉感は耳の血行に関係あるようだが、食後は腹に血が集中して耳では薄くなるのかも知れない。朝は その変化が特に大きいのか。
    • ただ、音によるものと違い、すぐに治る。
  • 同様に、演奏自体の音が悪くて耳の問題を引き起こすことは ある。が、元々そういう音なので諦めるしかない。
  • 今まで謎だったのは、ヘッドフォンに使っているPCのオンボードのサウンドでは耳の問題がほとんど起こらないことだが、オンボードなので出力のカップリングコンデンサの容量が大きくなくて、上に書いたような振幅の変動(ドリフト)を引き起こさないのではないかと推測している。
    • 他に、ヘッドフォンは(アンプへのラインでの接続と違って)インピーダンスが低いので、仮に大きなコンデンサを使っていたとしても、カットオフ周波数が高くなって(= 時定数が短くなって)変動が起こらないのかも知れない。
      • 例: カップリングコンデンサが100μFとした場合のカットオフ周波数, 時定数
        • ヘッドフォン(30Ωとした場合): 53Hz, 6.9ms
        • ライン(50kΩとした場合): 0.032Hz, 12s
  • 測定時に、意外なものが原因で特性が想定とズレて、原因探しや対処に結構手こずった。
    • さまざまな超高域の低下要因: ボリューム(意外に効く), アッテネータ(抵抗), ADCのカップリングコンデンサ?(その前にあるアッテネータとの関係?)
    • (特にDCの場合)低域の歪みの増大要因: ADCのカップリングコンデンサ?(超低域での電荷が溜まる?)
  • とても小さいコンデンサ(100pF)は、テスターでは容量が測れなかった。寄生容量の影響だろうか。
    • それでも、一応検品したかったので、複数個(8個)を並列に繋いで測ってから いくつか(4個)を外して再度測り、差分の平均値から1個あたりの容量を推測した。
    • それにしても、テスターの仕様上は測れるはずなのだが、どうして駄目だったんだろうか?
  • 最初に「電解コンデンサを撤廃した」と書いたが、実は少し残って居る。: アンプのスピーカー保護部の入力のLPFに使っている。
    • ここには音は通らないが、アンプの出力から電流が流れ込むので、ASUSのカップリング回路を残したまま代替カップリングコンデンサを付けた時と同様に、何らかの影響はあるはずだ。
    • 流れ込む電流をシミュレートしたところ、低域(約500Hz以下)で影響がありそうだった。
      • スピーカーに流れる電流との比は約0.022%(-73dB)だった。
    • ただ、容量が22μFとそれほど大きくないせいか、音が通らないせいか、アンプのスピーカー出力に繋がっているせいか、聴感上の問題はなさそうだし、特性の違いもなかった。
      • 実使用時はスピーカーによる負荷変動が大きく、充分アンプが吸収するのではないかと推測している。
    • どうしてこういう構成にしたのか(今となっては、LPFはオペアンプの後ろでもいい気がする)記憶がないが、さすがに「ちょっと動かしてみる」訳には行かないので、保留にしている。

 

おまけ: ボツ+α写真集

いつか書こうと思って居たけど、音が悪くて無駄などで使う宛てがなくなったものを消化。

 

書いたあとでの話 (2/8 15:33)

「動作確認と特性の測定」の「位相の比較」に追記したように、カップリングコンデンサ(AltCC)を2倍の0.44μFにして試してみたら、確かに位相のズレは減ってDC接続(カップリングコンデンサなし)と それまで(1個)のの中間になったが、特に音は変わらなかった。

更に思い付いてDC接続※でも聴いてみたのだが、以前と同様に、なぜか・やっぱり音が駄目だった。: 荒さ(ザラついた感じ)やキツさや うるささを感じたものの、耳の調子のせいかと思って我慢して聴いていたら、少し耳が痛くなった(なかなか回復しなかった)。

※以前は駄目だったが、今は電解コンデンサもマイカコンデンサもないので、もしかしたら行けるかと思った。

推測ではあるが、入力にコンデンサがないために、DACから超低域の揺らぎ(ドリフト)や雑音が流れ込んで音を悪くしたり、耳に問題を起こすのではないか。あと、「歪み率の比較」に書いたように、中低域の歪みの謎の増大が関係あるのかも知れない。なぜ、AC接続だと歪みが減るのかも分からない。

他の原因として思い付いたのだが、DC接続の場合、DACの出力オペアンプの出力がボリュームを介すものの直接アンプに繋がっているため、振幅に応じた負荷変動が起こって、歪みが悪化したり音質が劣化するのかも知れない。※ あと、カップリングコンデンサがない場合、出力オペアンプとアンプが直流的に繋がっているのは なんか悪そうな気がする。

※そういうことがあるのかは分からない。: 実際、アンプの入力抵抗は大きいので、可能性としてはボリュームのほうがありそうだが、ボリュームがなくても低域の歪みは増大するので、アンプが関係していそうだ。

ただ、単に耳の調子が悪かった可能性(期待w)もあり、まだDC接続を捨て切れない。AC接続で充分音が良いから そこまでの価値があるとは思わないが、仕組みがシンプルになるのが魅力だ。

そういう訳で、AltCCの正式版はアダプタにして着脱可能にするか、ASUSの元のカップリングコンデンサと交換しつつDC出力も付けるようにして、随時試せるようにしたい。

聴いて試す以外に、測定の時にDC出力は有用だ。

 

(2/11 9:01) その後、アンプ内蔵の、スピーカー保護回路の動作確認をした。ここは変更していないが、改良後の回路は以前と特性が変わっているので、それでも問題なく動くか確認したかった。

もちろん、保護回路は問題なく動く仕様だし、実際にアンプから出力しなくてもテスト回路でチェックできるが、実際に確認しなければ分からないことは ある。

改良後のフィードバック回路(AltFBC)によって超低域のゲインが抑制されているため、以前のように1Hzの正弦波を出力しても、最大振幅(-3dBFS RMS, 推定約1.3V※)でもオフセットと検出されずにミュートしなかった。

この時、手を抜いてスピーカーを繋げたまま出力したら、「ボツ」っという音が出て驚いた。調べたら、意外にコーンの動きが大きくて、何らかのタイミングでコーンが急に元の位置に戻る時に音が出たようだ(音を停める時にも、コーンの位置によっては出ることがあった)。

また、スピーカーは意外に感度が良いようで、1V程度でも大きく前後に動き(まあ、アンプが充分に電力(電流)を供給しているためだろう)、「ボツ」っという音も結構大きかった。

それでスピーカーを壊すのが怖いので、負荷を抵抗(大容量のもの)に換えた。が、そこでも「やらかし」たようだw チェックが終わって抵抗を外す時に、1個の脚1本が外れていることに気付いた。付ける時は問題なかったので、チェック中に外れたようだ。

推測だが、チェックの左右チャネルを切り替える合間に出力を切るのを忘れて居て、それなりに出力を掛けていた(最後の頃は15Hz, -8dBFS(推定出力: 約12W)の正弦波を試した)ために抵抗が熱くなって半田が外れたのではないか。聞こえないから気付かないが、なかなか危ない・・・

なお、最初にミュートしなかった最大振幅でのチェックのあとで耳閉感が起こったので、聞こえなくても耳に影響があることは確かだ。

※試行により、アンプの1Hzでの減衰(パワーバンドとの比)は約-22.5dBであることが分かり、また、事前の想定どおりに超低域でのアンプのゲインが抑制されていることが分かった(本来のゲインは10倍(20dB)なので、抑制によって概ね1倍になったと考えられる)。

どうやってDACから直流に近い信号を出すか試行錯誤し、デューティ比が100%に近い矩形波(1Hz, 99%)を出力することで「ほぼ直流」を出せた。そして-3.5dBFS RMS(推定約1.3V)でミュートした。これは保護回路の しきい値の+1.2, -1.4Vに合っているので、正常に動作していることが確認できた。

そして、上に書いたように、この確認では早速DC出力が活用できた。DC接続でなかったら、直流に近い矩形波はDACから出力も されないはずなので。

 

(2/12 8:23) 「出来た出来た詐欺」じゃないが、上で「看過できない」と書いた、低域での位相のズレが(音は全く問題ないものの)気に入らないので、「とりあえず試してみて、駄目なら使わなければ良い」という謎の論理でw、更にコンデンサ(AltFBC追加: ECQE 10μF, AltCC追加: UPZ 0.22μF(2個ずつ))を注文してしまった。

これらを追加すると、AltFBCもAltCCもカットオフ周波数が3.5Hzくらいに下がるので、幾らかは位相ズレが改善できるはずだ。

ただ、カットオフ周波数が下がると超低域の変動(ドリフト)も通りやすくなるのが気になるので、試して(聴いて)みないと分からない。だが、現状でも(耳の問題の原因と考えていた)10Hz以下が結構通っているけど問題ないので、大丈夫かも知れない。

そうすると、耳に問題を起こしていたのは超低域が通る・出ることでなく、(大容量の)電解とマイカコンデンサ(の誘電体吸収の害?)だったということになる(他に、DACとアンプを直結(DC接続)すると電気的な問題も起こるようだ)。

 

注釈

本文中の「DC接続」/「AC―」は冗長である。"DC"/"AC"は それぞれ"direct coupling"/"alternating-"の略で、既に接続の意味を含んでいるからだ。ただ、"DC"/"AC"だけだと直流/交流(direct/alternate current)との区別が付けにくいので、「接続」を追加した。

余談だが、「DCアンプ」のDCを「直流(まで増幅できる)」と解釈している方が居るが、それが正しいのか正しくないのかは分からない。 (僕も昔は そう理解していた。)

 

(-2/7 8:40 加筆・追記、修正、写真を追加など。煩雑なので、加筆・追記した日時を削除。; 2/7 9:34-10:25 低域の位相ズレと高域の歪み率の差について追記・補足, 「注釈」を追加; 2/7 10:59 振幅と位相のグラフを、DAC-ADC直結で正規化したものに交換し、特記事項を更新した。; 2/8 15:33 「書いたあとでの話」を追加; 2/8 17:55 振幅と位相の比較に加筆; 2/9 10:56 AltCCの設定を更新, 測定結果のグラフを交換, 13:40 BA3886単体の「周波数特性」他に加筆, 13:51 構成を若干修正, 15:55 題を修正; 2/11 9:01, 12:14 スピーカー保護回路の動作確認の話と関連写真を追加; 2/12 8:23 更なるコンデンサ追加の件を追加)

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