オールシーズンタイヤに交換する際に、その走行音が気になっていた(うるさくないかだけでなく、どのように変わるか興味があった)ので、交換前後に走行音を録音していた。今、それらのファイルを聴いただけでは違いが良く分からないのだが、周波数分析した結果(スペクトラム)を見たら、交換後に感じた違いらしきものが見つかった。
- 交換前1
- 交換前2
- 交換後1
- 交換後2
測定・分析条件:
- 録音日時: 2017/3/18 午前(交換前)、午後(交換後)
- 録音場所: 宇都宮市内 (市街地)
- 録音機器: iPhone 6s (内蔵マイク、アプリ=ボイスメモ)
- 録音機器の設置場所: 助手席に置いた工具箱(高さ約15cm)の上
- タイヤ
- 交換前: ブリジストン BLIZZAK REVO GZ
- 交換後: グッドイヤー Vector 4Seasons Hybrid
- 走行状況: 渋滞はなく、普通に流れていた。最高速度は60km/h程度。
- 分析した時間: それぞれ20-30秒程度
グラフを見てすぐに気づくのは、交換後には約240Hzに山があることだ(上記の2種類以外の部分でも山は出ていた)。 240Hz以外には、約100Hz付近も異なっている。
それで、交換前後のグラフを重ねて描画した(重ねられる波形分析ソフトがなかったので描画ソフトで重ねたが、縦軸も横軸も大きな違いはなかったので、問題はないと思う)。すると、違いがはっきりした。やはり、100Hzや240Hz付近が大きく違う(1kHz付近も異なっているが、別なノイズかも知れない)。グラフで見る限りは、少しだけうるさくなったようだ。
ちなみに、ピークの約40Hzはエンジンの音と思われる。40(Hz)x60(秒/分)= 2400rpmなのであろう。ただ、普通の道なので、もう少し低回転だったような気はする。もしかすると、1200rpmが40Hzになっているのかも知れない。 → 4サイクルは2回転で1回爆発するのと4気筒エンジンである関係で、回転数に対する周波数が倍になるのだろうか。調べてみたのだが、まだ良く分からない。 → (3/20 6:43 追記) 4サイクル(4ストロークサイクル)では2回転(4行程)で1回爆発し、4気筒では各気筒が順番に爆発し、「1回転」では2つの気筒が1行程ごとに順次爆発するから、倍の周波数になるのだろう。
更に、soxコマンドのstatやstatsで音量や周波数を比較したところ、以下のようになった。
- 交換前
- 実効音量(RMS lev): -17.81 dB
- 大まかな周波数(Rough frequency): 97 Hz
- 交換後
- 実効音量(RMS lev) -17.55 dB
- 大まかな周波数(Rough frequency): 150 Hz
確かに音量の値は増えているが、0.3dB程度なので、有意な差はない(音量に大きく寄与しているのは、エンジン音だからなのだろう)。また、「大まかな周波数」が数十Hz異なっているので、走行音がちょっと違って聴こえたのが納得できる(でも、もしかしたら、この周波数の違いはスピードの違いかも知れない)。以下に、最初に乗った時の感想を転載する。
スタッドレスと変わらないか少し静かになった気がする。(略) 中域で音の成分が若干違う感じがしたが、すぐ慣れた。
この違い(特に100Hzや240Hz付近)は、タイヤのパターンや材質の違いによるものだろうと推測する。なかなか興味深い。
(3/20 7:23 若干加筆・修正)
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(3/20 6:36 追記) パターンと材質は、1kHz付近に関係していそうなことが分かった。
「タイヤ/路面騒音特性に関する研究―タイヤの影響について―」(2002)より、タイヤのパターンの横溝が路面と接したり離れたりすることで生じる音の周波数f (Hz)は、Vを車の速さ(km/h)、Nをタイヤの外周上の横溝の数、rをタイヤの半径(m)とすれば、
f= VN/(3.6*2πr) (Hz)
なので、横溝の間隔をd(cm)とすれば、
f= 100*V / (3.6*d) (Hz)
となる(途中の計算は省略した)。条件を変えてfを計算してみると、
- d= 1.5cm、V= 60km/hの場合、f= 1111Hz
- d= 1.25cm、V= 60km/hの場合、f= 1333Hz
- d= 1.25cm、v= 50km/hの場合、f= 1111Hz
となり、オールシーズンの1kHzの音はここから生じているようだ。ただ、スタッドレスも横溝の間隔は同じくらいなのに、山がない。スタッドレスの素材が柔らかく、パターンに細かい横溝(幅= 数mm)があるのと、横溝を縦に分割している(オールシーズンはつながっている)からだろうか。
そして、オールシーズンの240Hzの山は何なのかなど、興味は尽きない。
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(3/21 10:53 追記) その後、タイヤの固有振動数(特に縦(厚み)方向の振動)を概算してみようと思ったのだが、(僕の苦手な)バネだの何だので計算が難しいことが分かった。それで、安直に「タイヤ 固有振動数」で検索してみたら、ブリジストンの「自動車用タイヤの基礎と実際」という本(2008)が見つかった。やっぱり理論や式が難しいし、タイヤのパラメタも不明なので、具体的な数値は求められないが、オーダーは分かった。そして、100Hzや240Hz付近はタイヤの固有振動数(100Hz)、空洞共鳴(240Hz)、トレッド部の振動(両方)に起因していそうだ。
以上をまとめると、
走行音のうち、中低域はタイヤの材質や構造に依り、高域はトレッド部のパターンに依る。
ということだろう。要は「そういうタイヤなのだ」ってことで、今となってはものすごく当たり前のことで、何か新しいことがあるのかと言えばないのだが、理論的に分かった(気がして)良かった。
PS. 最初に自分で書いた、「今、それらのファイルを聴いただけでは違いが良く分からない」というのも気になる。要は、「僕のオーディオが原音を再生できていない」ということなのか。まあ、iPhoneのアナログ系、特にマイクも当然関係しているだろうが、なかなか奥の深い問題だ。 (3/20 7:18)
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