今年の頭辺りにHMVの広告で見てから、ずっとSpotifyでの配信を待っていたのだが、全然入らないので、調べてみたら、どうもレーベル(Hyperion)のトップが石頭で、反Spotify派のようだ(参照: "Is Spotify good for classical music?" (2014): "Hyperion"で検索: 真ん中辺り)。以下にその言い分を引用するが、僕は全く賛成できない。

Services like Spotify and YouTube are great for the consumer, but they’re training an audience into thinking that classical music has no intrinsic value in terms of money. And the Spotify model does not work for classical because as a proportion of listeners, there is not enough traffic for it to generate the sort of income a label needs to invest in a performer and recording.

前半は、「(Spotifyなどは)ユーザーに『クラシック音楽にお金を払う価値はない』と思い込ませる」といった主張だが、どうしてそういうことになるのだろうか。「妥当な料金で正当に聴けるのなら、お金は払いたい」と思う人が配信サービスを使っているのではないだろうか。どんなジャンルだって、お金を払う価値はないと思う人は、サービスに入らないと思う。昔のスウィフトのような主張なのだろうか。

後半は、「クラシックを聴く人が少ないから、商売にならない」ということのようだが、そんなこと言ってるから、更に聴く人が減るのではないかと思う。別に、配信サービスだけで商売しなくたっていいのに、どうしてこういう考えになるのだろうか。配信サービスからのライセンス料が少ないのが背景にあるのだろうが、値上げ交渉の余地はないのだろうか。それに、そもそも、CDなどを作った時点でコストは償却されるだろうだから(今は、それで収支計算しているのではないか)、多少安くたって出したほうがいいと思うし、勝手なYouYubeや違法ダウンロードよりはずっといいと思うが。そもそも、これはレーベルの(営業的な)論理であって、演奏者の意見ではないところが、身勝手な気がする。演奏者が認めれば出せばいいのに。

上の記事を読んだら、石頭の下に書いてある、(若い)チェロ奏者Alisa Weilersteinの意見がすごくまっとうで賛成できた。やはり、石頭が言っているのは、レーベルとか老人の論理なのではないか。まあ、確かに、レーベルがなくなってしまったら、演奏を録音・販売できなくなってしまうが、いつまでも高コスト体質のままでいるのは良くないような気がする。ただ、そもそもクラシック音楽の録音・販売にはお金が掛かりそうなので、難しいのは分かる。下手をするとメジャーレーベルしか残らないことになりかねない。だから、もっとローコストな方法を探すべきなのだろう。

それに、記事に書いてあったように、クラシックの好きな人は、まだレコードだのCDだのの物理的なコレクションが大切な人が多いらしいから、当面はそこに売って行けば収入は確保できるではないか(古い人は、「ここは配信サービスにも出しててけしからんから、CDを買わない!」とは言わないだろう)。そして、新しい人用に配信サービスの経路を追加すれば、少ない支出(ほとんど0?)で少しは収入が増えるし、知らない人に聴いてもらって裾野が広がる可能性があるから、悪いことはないと思う。

と、いろいろ思うところはあったのだが、待ってても永遠にSpotifyには入らないことが分かって観念し、もしやと思ってHyperionのサイトに行ったら、ダウンロード購入できることが分かり(実際には、最初に、もうちょっとCDやダウンロード版を安く買えないものかとHyperionのサイトを検索し、そのあとでSpotifyに入る可能性を調べたら上の記事が見つかった)、試聴しても悪くなかったので、少し迷ってから買った。そのサイトは全体的には良い方だと思うが、いいところと悪いところが混在していた。

  • いまだにFlashの「ダウンロードマネージャ」を使っており、僕のブラウザではもうFlashなんて動かないから、1曲ずつダウンロードすることになって面倒だった。せめて、「全部ダウンロード」の機能が欲しい!
  • でも、アルバム全体でなく、欲しい曲だけ買えるのはいい。しかも、トラックごとでなく、曲(ここでは「春の祭典」)をまとめて買えたのが良かった(それで割り引きがあると思い込んでいるが、実際にはどうだったか)。
    • こういう「切り売り」は上の主張に反していて、むしろSpotify的な気がするのだが、そうではないのだろうか? クラシック的に売るなら、アルバム全体でしか売らない方がまっとうに思えるが、それでは誰も買わないのを知っている?w
  • CDのブックレット(PDF)がダウンロードできるのはいい。でも、見ないけどw
  • MP3とかの圧縮版だけでなく、(非圧縮の)FLAC版があるのもいい。
  • ファイルのタグはちゃんとしていて、全く修正が要らなかったので、感心した。購入日と再生ゲインを追加しただけだ。
  • ジャケット画像が埋め込まれていて、これも手間要らずだった。
  • 曲間での音切れもない。当たり前ではあるが、重要なことだ。FLAC版やタグの件も含めて、この辺りは「分かってるな」と感じた。
  • PayPal対応で、気軽に買える。

価格は、「春の祭典」だけの14曲でGB(UK)£4.8で、PayPalでは約740円だった。為替レートより高いのだが、手数料が高目なのだろう。調べたら、クレジットカードだと少し安いようだが、数十円の差なのでPayPalにした。なお、CDだとAmazonで1800円くらいなので、曲を絞ったせいもあって、かなり割安になった(アルバム全部のダウンロードは約1300円)。ファイルサイズは、FLAC版でも全部で約120MBと、小さかった。

そして、肝心の演奏は「言うことない」と言えるくらい良い。最初から最後まで、「うっ」と思うことがなくw、流れるように進んだ。サイの(2000)のような驚きはないが、正統的な演奏でいい。オリジナルはオケ用だが、元から2台ピアノ用と思えるくらい自然、かつ、物足りなさを感じなかった(これは、僕がピアノ好きだからなのはあると思う)。ピアノの音もいい。好きな音だ。そして、乗れる(本来はすごく変なリズムらしいが・・・)。あっという間に聴き終わってしまった。「うーん、うまい。もう一杯」と、また聴いているw

 

PS. やっぱり、Hyperionの考え方では駄目だと思う。というのは、売り切りのCDやダウンロード販売では、売ったあとに何千回再生されたって収入は1円も増えないが、配信サービスなら、再生されるたびにお金が入るのだから、みんなに何回も聴かれるようないい演奏を出せば、より稼げるはずではないか。レーベルはそういう考えでやって欲しいと思う。 (9/25 21:19)

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5件のコメント

  1. Himajin:

    こんにちは。
    直接的にクラシックの話題とは関係ないかもしれませんが、
    Spotify関連でこんなニュースがあったのをご存知でしたか?

    ・「DAZN」がSpotifyと提携 月額1750円で両サービスを使えるキャンペーン
    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1809/06/news145.html

    れんとさんがどのくらいスポーツに興味がおありなのかは、
    分からないのですが、Spotify Premiumほどの値段で、
    二つのサービスを利用出来るのですから魅力的ではありませんか?
    安過ぎるというか、ある意味では反則的です(笑)

    私はDAZNとSpotify Premium両方を、
    既に契約してしまっているのでキャンペーンの、
    対象外になってしまいました...

    こんなキャンペーンがあると知っていたら、
    契約を遅らせたかもしれません...

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  2. Himajin:

    申し訳ありません。
    また間違えてしまいました。

    「Spotify Premiumほどの料金」ではなく、
    「Spotify Premium 2か月分ほどの料金」でした。

    (言い訳ですが)このキャンペーンの影響で、
    心が動揺してしまいました。

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  3. れんと:

    ●ご紹介、ありがとうございます。残念ながら、スポーツには全然興味なくて(ニュースの見出しを見る程度です^^)、折角ですが、DAZNには入らないです。

    でも、DAZNだけでも1750円/月みたいなので、随分安いんですね。本当に反則ですね^^

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  4. Himajin:

    私はクラシックには詳しくないのですが、
    FLACをしかも非圧縮で配信しているというのは、
    ユーザーにとって嬉しい事なのではないでしょうか。

    ユーザーにとって面倒なタグ付けもReplayGainぐらいで充分で、
    ちゃんとしてるなんて、Spotifyにも見習ってほしいものです。

    FLACですから(Ogg Vorbis以外の)非可逆圧縮と違い、
    「曲間の音切れが無い」= 「ギャップレス再生」というのも、
    ユーザー目線をしっかり分かっているなと思います。

    ダウンロード配信にしても、ストリーミング配信にしても、
    海外の方が先を進んでいるように感じます。

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  5. れんと:

    ●まさにそのとおりです。海外のメジャーレーベルでも基本はMP3ですし、タグもいい加減なことが多いし、曲間を勝手にフェードout/inしているところもありました(デッカ: この件は、以前ブログに書いています)。ちなみに、ここには24bitのFLACもあります(少し高いですが)。その点で、ここはすごくいい方だと思います。

    Spotifyももう少し曲情報をちゃんとしてくれればいいですね。

    そして、やはり海外は進んでますね。日本はいまだにCDが現役じゃないですか(しかも、実態は投票だの握手用とかw)・・・

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