昨日だったか、車関係のまとめサイトで「【悲報】中国で製造されたアウディの車から有毒物質 白血病など健康被害が続出」という記事(→ 元の記事)を読んで驚いた。その記事では、車に瀝青が使われているために健康被害が出ていると書いてあった。

なぜ驚いたかと言うと、僕のPCケースは防振・防音性を高めるために、内側に瀝青のシートを貼付しているのだ。有害なのなら、至急剥がさなければならない。何年も前から軽い咳が出て治らない(原因不明)のは、このせいかとも思った。それで、まずは瀝青(= アスファルト)の有害性について調べた。

瀝青は、国際化学物質安全性カード(ICSC)の「アスファルト (ICSC番号: 0612)」に載っている。以下に主要な項目を転載する。

  • 一次災害/急性症状: 咳、息切れ。
  • 長期または反復暴露の影響: この物質のフューム※は人に対して発がん性を示す可能性がある。
  • 予防: 身体への暴露: あらゆる接触を避ける!
  • 暴露の経路: 体内への吸収経路: フュームの吸入。
  • 吸入の危険性: 20℃ではほとんど気化しない。しかし、拡散あるいは加熱すると浮遊粒子が急速に有害濃度に達することがある。
  • 許容濃度: (記載内容を見ても危険性が判断できないので省略)
  • 沸点: > 300℃

※フューム(fume): 融解した物質が酸化などの化学反応や揮発によって核となり,気体状大気汚染物質が凝縮してエーロゾルとなったもの。 ミスト(mist)、もやのこと。 (コトバンクの表記を若干修正して転載)

IARC発がん性リスクでは、瀝青(Bitumens, occupational exposure to oxidized bitumens and their emissions during roofing))※は「グループ2A(ヒトに対する発癌性がおそらくある (Probably Carcinogenic)、化学物質、混合物、環境)」だ。

※英語の定義は酸化物に長時間接している場合や屋根からの放散のようだが、和訳がないのでそのまま載せた。また、グループ2Bと3にも瀝青は挙げられているが、違いは良く分からない。

確かに瀝青は発がん性物質(正確には発がんのリスクがある物質)で、接触を避ける必要があるようだが、僕の見解は「大きな問題なし。対処は保留」である。というのは、ICSCにあるように、問題になるのは吸入した場合だが、沸点が非常に高いことを見て分かるように、常温ではほとんど気化しないし、気化するほどの高温にもならないし、機械的に接触する動く物(例: ファン)のようなものはないから、(削れて)拡散することもないからだ。可能性があるとすれば、作業時の蓋の開閉やHDDなどの微妙な振動で擦れて削れて粉末が放出されることだが、余り大きな影響はなさそうだ。

それから、ある記事(書き方がミスリーディングで、危険なように見えるが実際には違う)にあったのだが、カリフォルニアの先住民族がしていたように、飲料水を瀝青で覆った容器に入れておいても健康上の問題になるほど溶け出さなかったという結果もあるから、瀝青は充分に安定だと考えられる(水に溶けないなら、常温の空気にはもっと溶けないだろうという論理)。

また、IARCによれば、瀝青と同じグループ2Aには赤肉や紫外線A,B,Cやディーゼルエンジンの排気ガスのように、瀝青以上に日常的に接している物質があり、本当に発がんのリスクを減らすなら、そっちを何とかする方が先※だろう。それ以上に、グループ1のアルコール飲料や加工肉を飲食していたら、瀝青のことなど気にしてもしょうがないはずだ。

※実は、ここには論理の飛躍がある。危険が発現する瀝青の濃度・量と肉や紫外線や排気ガスの濃度・量を比較しなければ、どちらを減らすべきかは分からない。(が、どう考えても後者の方が接する量が多いので、可能性が高そうだ)

余談: (ストレスによる)発がん性、いや、健康被害という点では、「(日本の)満員電車に乗って通勤する」とか「日本企業に勤める」とか「(今の)日本で暮らす」というのはかなり危険だと思うのだが、幸い(幸か不幸か?)、IARCには載っていなかったw

実は、その防振シート(これだったか、その中身だったか)を買ってケースに貼る時(十年近く前)に、見た目や手触りや臭いがどうも変(危険な感じ)で、材質が「瀝青」と見慣れないものだったから、調べてみて「問題ない」という結論になったはずだ。そもそも、瀝青(= アスファルト)は道路の舗装に使われているので、もしすごく有害な(少ない量でも被害が出る)のなら、世界中で健康被害が出るはずだが、そんなことはない(実際には出ているけど、誰も関連付けていない・影響が大き過ぎるので隠されている可能性はあるが、そこは分かりようがない・・・)。

発端となった記事の原因の可能性としては、訴えた人や記者が瀝青とコールタール(IARCではグループ1(ヒトに対する発癌性が認められる (Carcinogenic)、化学物質、混合物、環境); ICSC)を混同※しているとか、実際には別の有害物質が使われているとか、単なる言い掛かりやデマだろうかと思う。

※記事中の「瀝青からはベンゼン、ベンゾピランなどの発がん性物質を放出する」というところは、コールタールとの混同を伺わせる(僕の調べた限りでは、瀝青にはベンゼンの類は含まれてないので(→ 参照))。

そして、上に「論理の飛躍」と書いたような、良くある「猛毒、*は食べてはいけない」とかいうセンセーショナルな記事を思い出した。そういう記事は、たいてい、危険になる使用量をぼかしているか、明記してもそれと日常生活で摂る量との関係をぼかしている。通常の使用量では全く問題ないのに、動物に大量に使用したら害が出たことをもって、普通に食べるだけでも「危険」と言っていることが多い。この論法で行けば水も有害なのだが、そこはどうなのだろうか? (確かに、浄水器とか水素水だの電子水なんてのはあるが、これはそれとは次元が違う。「水そのものの大量摂取が有害」という話なので、そういうもので無害化するのは無理だ)

結局、僕はその記事はデマだと結論付けたが、こういうのを真に受ける人も結構居るからなかなか難しい。今回は(まだ?)それほど大きく広まっていないが、こういうのが「*は危険、使用停止を!」ブームとか不買運動とか、いわゆる風評被害になるのかも知れない。ただ、だからと言って、危険と騒がれている物・安全性が疑わしい物がすべて問題ないとも思えない。震災で放出された放射性物質も豊洲市場の残留物や黒い粉塵の問題も、本当に危険なのかそうでないのかは、自分で調べてみないと分からない(し、危険だとしたってどうしようもない)。

更に、たとえ安全だとしても、必ずしも「安心」にならないところも難しい。後者は、簡単に言えば気分の問題なので、自分で納得するしかない。そして、不安を感じ続けることで本当に健康被害が生じる可能性もあるから、「気のせいです。はい、クレーマーは帰った帰った」と無碍にもできない。

実際、僕も、昨日まではなるべく早くPCケースの瀝青を除去しようと思っていたくらいだし、今でも、「大きな問題なし」と結論付けたにも関わらず、(優先度は低いものの、)除去したい気分はある。というのは、防振・防音の効果に疑問がある(元々そんなにうるさくないから不要なのでは? / 貼っていれば少しは効いているのでは= 気分の問題)ので、わずかにでも危険性があるなら、なくてもいいと思う(これも気分の問題)からだ。ただ、当時、かなり念入りに貼ったので、剥がすのはかなり面倒そうだから、実際にはやらないと思う。

結局、安心の問題を解消するには、まずは、危険性に関する正確な情報を出し、客観的に問題がないのであれば、丁寧に説明して※納得してもらうしかないと思う。

※ここで大きな問題なのは、ゴマカシが入る余地が大いにあることだ。説明する側も聞く方も専門的知識がない上に、説明する方は大抵恣意的で、言葉・文言自体は正しいので嘘とは分からない嘘を言っていることが多いし、「丁寧に説明する」と言っただけでそうしたつもりになるおめでたい輩が居る。そのうえ、聞く方にも問題があって、懐疑的なうえに単純明快に1/0(「安全かそうでないか」)に帰着させようとするから、話がまともな方向に進まない。

最後に、個人的な意見だが、いろいろ納得できないことは多いにしろ、諦めることも重要だと思う。もし、すべての健康被害のリスクを避けたいなら、文明から切り離された人里離れたところに一人で暮らすとかしかなさそうだが、それだって、熊や虎や蛇などの野生動物に襲われたり、自然の毒(毒草、毒キノコ、普通の野菜に含まれる毒成分など)で被害を受けるリスクはあるし、それ以外にも紫外線からは逃げられないだろうし(洞窟の中で??)、そもそもそういうところでまともに暮らせるかは疑問だし、それで生き長らえる意味はあるのかと思う(いや、病気や怪我になっても診療してもらえないから、却って寿命は短くなるだろう)。

逆に、身の回りにいろいろなリスクはあるにせよ、それがあってもなくても、いつどのような原因でどうなるか分からないのだと割り切って、精神的なイライラを減らしたい。でも、誤魔化されたり無知なために理不尽に被害を受けるのは嫌だから、こういうふうに、ちゃんと調べたり考えたりはしたい。

  •   1
  •   0

コメントを書く

名前    

メール 

URL