Archive for the ‘オーディオ’ Category

耳の問題の原因調査昨年末からのアンプ・DACの改良の草稿や余りを捨てるのも もったいないので、最低限の加筆・修正で公開して「消化」する。僕以外の方に有用かは不明だ。

最終的に「分かった」こととは異なる内容や今までの稿と重複している内容もあるが、発端や経緯や試行錯誤が うかがえる。

稿を書き出した順序や内容から、アンプなどの改良をし出し(てしまっ)た切っ掛けが分かった。: まず、冬になって耳の問題が起こりやすくなり、その原因を調べているうちに、DACのカップリングコンデンサの劣化を疑い、試しにコンデンサを追加したら効果があったことから始まったようだ。

なお、補足を「注: *** (2023/5/16記)」のように書いた。また、公開する時に図(主にグラフ)を追加しようと思って居たが、概ね却下したもの または公開した稿で更新しているので、以下には ない。


[耳・オーディオ] 耳の問題の原因が概ね分かった!」の余り (草稿: 2022/12/5-)

音が悪いと耳が辛くなる(耳閉感が多い)現象・症状

※身(耳)調の影響は大きい。それと外部要因を切り分けるのが難しい。かと言って、耳閉感が全部身(耳)調からのものという訳ではない。というのは、それまで調子は問題なかったのに、悪い音を聞いた途端に なることがあるからだ。

  • ASUSで44kHz(フィルタ: slow)は問題なく、sharpだと危うい(昔は問題なかったが、近頃は ほとんど駄目)が、96kHz(sharp)なら問題ないので、超高域の量ではなさそう。
    • 可聴域ギリギリの高音域(15k-20kHz)での位相(か何か)の急変が関係あるのかも知れない。
      • 実際、中低域でも急なフィルタは駄目だった。 → 高域・位相とは限らず、どの帯域でも急なフィルタが駄目なのかも知れない。 (原因候補1)
        • それが何(歪み? 雑音? 位相?)に関係して耳閉感になるのか、まだ分からない。
        • 超低域(原因候補4)との関係が不明。独立なのか、超低域を補強するのか。12/31の投稿を参照。 (2023/1/3)
    • slowは問題ないが、特性が物理的に正しくないことが分かったので、使わないことにした。 (12/15)
    • なぜか、96kHzのslowが良かった。次は44kのslow。sharpは ほとんど駄目な感じ。12/31の投稿を参照。 (1/3)
    • 注: "ASUS": Essence STX II (DAC);  "44kHz", "96kHz": サンプリング周波数; "sharp", "slow": DACのフィルタの特性 (2023/5/16記)
  • また、Scarlett(96kHz)は駄目だったので、全体的な歪みと雑音の量も関係あるではないか。 (原因候補2)
    • 信じられないことに、それらの上限は とても低いようで、Scarlettの歪み: -94dB, 雑音(DR): 108.5dB(A)※では駄目だ。
      • ※ScarlettとASUSの差は約16dBなので、ASUSの約6倍。
      • 更に、(昔の?)CirrusのDACやADC(Scarlettのはコーデック)は、駄目なノイズシェイピングで可聴域外の雑音が多いせいか、耳閉感が起こる。
        • → 20kHz以上を落とす簡易なLPFを試したが失敗した。。。
          • LPF自体の性能(落とし方)の問題か、出力回路のドライブ能力の制限のために歪みが増えるためかは不明。
    • ASUSは歪み: -110dB, 雑音(SNR): 124dB(A)なので、仮に その2倍まで耐えられるとすると、歪み(THD+N): -104dB, 雑音(SNR, DR): 118dB(A)くらいだろうか?: ここらはCDの限界を超えているから、どうも信じられない。
      • 雑音の質(アナログ(ホワイトノイズなど)とかデジタル(量子誤差)とかのタイプや周波数的分布)にも関係するのかも知れない。
        • 例: 上のCirrusの可聴域外の雑音。
      • あと、小音量・SPの近くで聴いているのも関係あるだろうか。
      • 車とかヘッドフォンの音(特性・性能)は随分悪いはずなのに耳閉感が起こらないのが、謎。
        • アンプと関係ある?
          • 微細な雑音や歪みまで忠実に増幅するため?
          • 本当に発振していない? (以前測定した時は、100kHz辺りまでは大丈夫だったが・・・: スピーカーの上限が40kHzなので、100kHz以上は出なさそう。ただ、それより低い音が変質する可能性はある。)
            • 音を出していなければ症状は出ない。 → 発振していないか、音に合わせて発振することがあるか。
            • 音を出していても、「駄目なこと」(上記・下記)をしなければ問題ない。 → 発振していない可能性が高い。
    • 超低域(原因候補4)との関係が不明。独立なのか、超低域を補強するのか。12/31の投稿を参照。 (2023/1/3)

その後の追加

  • 雑音(34kHzなど)の結果 → (原因候補3)?
    • 34kHz → (3-1)
    • 8kHzと高調波 → (3-2)?
    • 1kHz以下の広い雑音 → (3-3)?
  • DACのカップリングコンデンサの劣化による超低域の変動? → (原因候補4)
    • DACのフィルタ(slow, sharp)や超高域の量や補正フィルタの傾きは無関係??
    • ただ、ASUSは そうでも、他のDAC(DS-200), インタフェース(Scarlett, DEQ)は無関係では。
    • なぜか、本当にコンデンサで音が違う。 (12/22) (DACのフィルタの稿に書く?)
      • 以前買って使わなかった黄色いものは悪くなかった(最初は少し違和感があった)が、WIMAは全然駄目だった。 (どちらも1uF)
        • 注: 「黄色いもの」: PARC Audioのフィルムコンデンサ (2023/5/16記)
      • 特性は全く同じ。
      • その前の電解コンデンサとの相性?
  • コンデンサの劣化とは関係なく、容量が大き過ぎて超低域がスピーカーから出て来て・あるいは超低域が変動して耳閉感が起こったようだ。12/31の投稿を参照。 (2023/1/3, 2/7) → (原因候補4)
    • 気付いた切っ掛けは、クラシック音楽を掛けると耳閉感が出て、ポップ音楽にすると消えたこと。それがリピートした。 (1/3)
    • カップリングコンデンサをフィルムに換え、アンプのフィードバックの電解コンデンサもフィルムに換えた。 (2/7記)
  • アンプのフィードバックのマイカコンデンサは音が悪いことが分かった。それが耳閉感に関係していたかも。 →  フィルムに換えた。 (2/7記) → (原因候補5?)
    • 誘電体吸収のため。 (2/13記)
  • 音以外に耳の調子によるものはある。朝、食後に問題が起こりやすい。  (2/7記) → (原因候補6)
    • 太い道路の自動車(朝の通勤時間帯は渋滞する)の低周波騒音? (2/13)

 

新DAC: 今のところ、手が出せる価格帯で可能な製品が ほとんどない。: iD4とAXE I/Oだけ(ESSとサポートがクソなところを除外した場合)。だが、どちらもCirrusなので超高域の雑音が駄目っぽい。

注: "iD4": Audient社; "AXE I/O": IK Multimedia社; "ESS", "Cirrus": DACのチップメーカー (2023/5/16記)


「三歩進んで二歩下がる? オーディオは作っては壊し? (今のDACのフィルタの謎解き → なぜか他のフィルタを作り直し)」 (改良の発端の頃の草稿: 2022/12/11-)

僕のオーディオシステムはソフトの割合が結構多いので、ハードを いじらなくても、主に部屋の影響の補正関係の調整や改良ができる※のだが、それで却って堂々巡りみたいなことをしている。ソフトなので、指を動かすだけで いくらでも作り直しができるのが痛し痒しだ。

※この前提は、基本的に出力装置(DACやアンプ)が音を そのまま出すこと、(何度も書いている、)無色透明・無味無臭なことである。そうでなかったら、何を補正するのか分からなくなってしまう。

 

DACのフィルタの謎

(いつも困っている)耳閉感の原因調査をしている時に、サウンドカードのDAC(PCM1792A)のデジタルフィルタのsharpとslowの違いを調べたら、思わぬことが分かった。: sharpは きっちりと減らすべき成分を減らすのだが、slowは超高域で大量に漏らしているのである。その成分はナイキスト周波数(サンプリング周波数の1/2)より上なので、僕の普通の測定では分からなかったことで、たまたま、スイープ信号や正弦波で調べていて気付いた。

それでいろいろ調べたら、slowの「漏れ」は既知のことだったようだ。

そんなに漏れがあるのに、僕の耳に合って耳閉感を起こさなかったのが不思議だ。 想像だが、漏れた成分の位相が逆になっていて、ナイキスト周波数の反対側の成分(本来の音)とうまく打ち消しあっているのだろうか。僕の環境では、そこまで測定するのは難しい。それでslowの緩いカーブが実現できているのだとしたら、TI(BB)のエンジニアはすごいと思う。

逆に、以前も書いたが、サンプリングレートが44.1kHzの場合は きっちり漏れないsharpが耳にキツいのも謎で、まだ良くわからない。これも想像だが、やっぱり急なフィルタ(の謎の副作用)が良くないのではないかと思っている。更に想像だが、調べていて、sharpにある長いプリ・ポストエコー(リンギング)の影響かも知れないとも思うが、はっきりしない。そもそも、このプリ・ポストエコーを含めてDACの音が構成される理論なので、見た目はおかしくても※必要なんだと思う。

※slowとsharpのインパルス応答を比較すると、slowはプリ・ポストエコーがほとんどなくて綺麗だ。ただ、必ずしも それが正しいとは限らない。

正しい処理(フィルタリング)を実装してみた。

44kHz+slowの音は耳に合うが、ナイキスト周波数の上の漏れが多いのは物理的に「正しくない」気がするので、アップサンプリング(96kHz)と耳閉感を抑えるため、超高域を減らすslowに似せた特性の LPFを使うことにした。 (→ 参考? → 参考?: 偶然だが少し似たシステムがあった)

趣味なので、別に正しくなくても、耳に合って気分良き聴ければいいとは思うが、物事はなるべく綺麗にしたいという気持ちもあるので、敢えて苦労・苦闘した。

LPFは いろいろ試行錯誤して、音が悪くならず(耳を痛めず)、特性がslowに近くなるものを見付け・調整した。

これのインパルス応答はslowほどではないものの結構綺麗で、プリエコーがほとんどない。

まあ、全くの酔狂ではあるが、これがうまく行けば、あとでDACを買い替えた時に、仮にそのフィルタが耳に合わず、更に切り替えできなくても、この方法で音を調整できそうだから良い。

この音をしばらく試して問題なければ「一段落」となり、載せる図などを集めて文章を整えれば終わりのはずだったのだが、、、

ちゃぶ台返し! (フィルタ関係を ほとんど全取っ替え)

そのLPFを いろいろ確認・調整・改良している うちに、位相や振幅の周波数変化や左右差が大きいのは良くない(要するに、音に対する処理は最低限にしたい)と考えて、(苦労した)上のフィルタも(その前にちょっと思い付いた)HD2Cも止め、補正フィルタも左右統合して、処理を随分簡素化した。

部屋の特性補正用のフィルタの超低域(< 100Hz)の歪みが増大しているのが気になって、上で使ったフィルタにしてみたら うまく減ったのが切っ掛けだった。

注: HD2C: ソフトでDACの2次歪みを補償する(しようとした)処理 (2023/5/16記)

スピーカーから出した実際の特性は分からないが、聴感は良い。何となく、音がよりクリアになり(音が「一皮剥けた」感じ)、よりストレートに聞こえるのにキツくなく、却って聞きやすくなった気がする(例によって、たまたまとか耳の調子とか気のせいの気はするが)。

→ 実際の特性は問題なかった。その後、微調整したり長く聴くにつれ、本当に音がクリアになったのを実感している。いつものように、今まで聞こえなかった音が更に聞こえるようになった。「情報量が増した」ってやつか。

左右の特性(特に位相?)を揃えるのは重要そうだ。 (12/22)

その代わり、HD2Cも止めたので歪みは全域で左右がアンバランスだ。ただ、歪みが増大しているといっても、RがLの約2倍になって0.0012%程度なので、大きな問題ではない(実際、HD2Cを入れる前も気にならなかった)気がする。それでも何とか解消したくて、原因と対処案を考えている。が、それはソフトではできないので、貴重なサウンドカードを壊す可能性もある・・・ (12/13 17:37)

更にどんでん返しが!

昨夜寝る前に、96kHzへのアップサンプルは良くない気がした。というのは、96kHzは44.1kHzの整数倍でないので、複数のサンプルが混じるためだ(まあ、高精度な処理をすれば実害はないのだが)。

それで、44kHzに戻ることを考え、その時のフィルタをどうするかと、slowとsharpフィルタのエイリアシング成分の漏れを再度比較するためにグラフを見返していたら、おかしなことに気付いた。入力している周波数のエイリアシング成分でない、更に高い周波数に大きい漏れがあるのだ。どうも、測定時に意図しないレート変換があったようで、どうやら、測定のために44.1kHzのテスト信号を再生する時にALSAが48kHzに変換していたようだ。

が、それでも、slowフィルタが良くないことには変わりない。

それで、結局、一番最初に戻って44.1kHzでsharpフィルタで試すことにした。これが耳に合わないなら、96kHzにアップサンプルするか。。。 (12/15 7:39)

だがしかし、まだまだw

やっぱり44.1kHzとsharpフィルタは駄目で、数時間で耳に来た。耳閉感が起こり、音が悪くも感じた。それで96kHzにしたら、耳は嘘のように治り、音がクリアになった。それから丸一日聴いているけど、問題は起こっていない。

全く謎は深い。

その後、アップサンプルに使うリサンプラを比較して、PAのものだとspeex-float-10が一番良さそうだった。なお、soxr-vhqが良い説が強く、最初はそれにして居たが、比べたら1kHzくらいからの位相の遅れが気になるので止めた。speex-float-10はsoxr-vhqの半分くらいだった。

また、GMBはPAにもJACKに出せるので、JACKに出す時に設定するリサンプラGstreamerのaudioresampleの引数を変えてPA(speex-float-10)と比較したら、特性の測定が難しいこともあって、明確な答えが出なかった。今は、小さな差ではあるが、雑音は多いものの歪みが少ない(まだ結果に自信がない)ので、PAに出すことにしている。 (12/16記)

注: "PA": PulseAudio(Linuxのサウンド系), "JACK": JACK Audio(Linuxのサウンド系), "GMB": gmusicbrowser(Linuxの音楽再生アプリ) (2023/5/16記)

まだまだ!

(出力の追加コンデンサで、なぜか耳閉感が出なくなった話。あと、コンデンサの音の話)

注: 「出力の追加コンデンサ」: ASUSのDAC出力にコンデンサを追加したこと。代替カップリングコンデンサの最初。 (2023/5/16記)

 

最後に言い訳じみたことを書くが、僕は決してオーディオの音を良く・好みにしようとして こんなことをしている訳ではない。部屋の作りとスピーカーと聴く位置で音が変わるから補正は必要だし、DACは そのままの音で問題なければ何もしないが、たまたま元々の音が耳に合わない(例: 耳閉感)※ので、仕方なく調整しているのだ。まあ、おそらく一般の方は全く関係ないことで、僕の耳が過敏とかちょっと病気なためだろう・・・

※記憶をたどると、サウンドカードを買ったばかりの頃は問題なかったが、ここ数年で合わなくなったようだ。アンプを自作に換えたのと時期が合うのが気になる。: アンプが劣化して雑音が多いのか、逆にすごく良くなって微細な音(雑音まで)も聞こえるようになったのか・・・

 

(あと、ScarlettのLPFも書く? Focusriteへの問い合わせの結果(やっぱりクソだった)と一緒に別にする?)

注: 「ScarlettのLPF」: ScarlettのDACから30kHz以上の雑音が出ていたので、外付けのアナログLPFで抑制しようとしたけど うまく行かなかった話。 (2023/5/16記)

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ある日の起きる頃に、なぜかDSDや1ビットDACやデジタルアンプ(D級アンプ)の原理が理解できた。そして、LPFを ちゃんと作れば、確かに大丈夫な(問題なく音が出せる)ことが分かった。

大変大雑把に書くと、DSDはDACがなくても そのまま音に なりそうだ※(以前、そういう記述を どこかで見た気がする)。というのは、DSDは ものすごくサンプリング周波数の高い1ビットのPWM(≒ 0/1の波形)であろうから、例えば、そのままアナログアンプに繋げば、アンプの入力段で積分されて(直感的には元の波形が復元されて)、それなりに聞こえる音になりそうだからだ。

※この時点でDSDのフォーマットを知らないので、もしかしたら制御信号があって、その雑音が出るかも知れない。それに左右(他のチャネルもあれば それも)が混ざってしまうから、本当に そのままでは無理そうだ。

でも、自分で調べた訳ではないが、デジタルアンプの出力のLPF(簡単に書くと、ものすごく高い変調周波数成分を削って滑らかにする)の特性は繋ぐスピーカーに依存するようで※、あるブログに載っていた あるアンプの特性を見たら、スピーカーのインピーダンスによっては20kHz以上が増大するという とんでもないものだった*@(要するに、「LPFを ちゃんと作れない」ということ)ので、やっぱりデジタルアンプは好きになれない。

※確かに、アンプやDACの改良をしている時に、アナログフィルタ(使ったのはRC)は後ろに繋ぐ回路の抵抗・インピーダンスによって特性が変わってしまうことを体験した。

*要するに、少なくとも そのアンプは、繋ぐスピーカーのインピーダンスが固定の設計である。一方、以前調べた日本のアンプ(DENON?)は そこら辺を ちゃんとしていたように思う。

@僕が がっかりしたのは、そのブログの著者は大変厳密で、客観的な測定に基づく評価をしているのに、(以前も書いた、海外メーカー・オーディオ関係者に多そうな)「聞こえなければ問題ない」というスタンスであることだ。あの特性で問題ないと思えるのは雑過ぎる・・・

「聞こえなければ問題ない」と言った途端に、(全員ではないにしろ、)機器の開発者が特性向上のために頑張る意義も、正確な測定に基づいて評価する意味もなくなって、単に主観的評価をすれば足りるので、自身のブログの存在価値を否定すると思うのだが、そうではないのか?

そもそも、デジタルアンプは効率良く大出力を得るのに適した方式で、それ自体に音が良い要素はない。※ だから、大音量を出さない環境・用途では使う必要がない。つまり、多くの日本の家庭には全く不要なものなのに、ありがたがる心境が分からない。

※ただ、DACが不要でデジタル音源から直接音を出せるので、その点ではアナログアンプより良くなる可能性はある。でも、DSDでない場合はアンプのチップの中でPWMに変換しているので、その影響は わずかながらあるだろう。

一方、出力(スピーカー直前)のLPFの部品(コイル、コンデンサ、抵抗?)の音の良し悪しの影響は大きいように思う。どちらを取るかはユーザの好み・志向・意思だ。

 

PS. 余り本題ではないが、本文に書いたような、LPFが ちゃんとしてないデジタルアンプと、別の超高域に無頓着な機器を組み合わせた場合に ひどいことになりそうな例を挙げる。

  • 駄目なノイズシェイピングで超高域(例: 30kHz以上)の雑音が増大するDAC+このアンプ → 超高域マシマシ状態 → ツイーターが焼損しない?
    • DACをアンプのアナログ入力に繋いだ場合。
  • 上のDAC+このアンプ+超高域にピークのある(例: ハードドームツイーター)スピーカー → 超音波のルツボ状態??: 本当に耳は大丈夫なのだろうか?
    • ハイレゾ音源で超高域にノイズシェイピングの雑音があったりすると、更に超音波に富むことに?・・・ → 鼠避け??w

実際に起こるかは分からないが、少なくとも、「聞こえなければ問題ない」と言って済ませる問題ではないと思う。詳しくないが、EMIやEMCみたいに、それぞれの機器が守るべき最低限の線が あるのではないだろうか?

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4年以上に及ぶ調査と実験・試行錯誤の末、分からないことは残って居るものの、耳の問題の原因が大体分かって対処できた。

過去のブログを調べたところ、2019年の10月末頃※から問題が起こり出した(以前あったものが ぶり返した)ようで、それから断続的に延々と続けて居た。

※このことから、問題は部屋(2020年に今のところに越した)やアンプ(2021年に今のアンプが出来た)には直接起因しないことが分かった。

症状

PCで演奏を再生して聴いていると、耳に以下の問題が起こることがある。

  • 耳閉感, 圧迫感
    • 耳閉感と圧迫感は微妙に違う。耳閉感がひどくなると圧迫感になるのかも知れない。
    • 低周波音に曝されると起こるとのこと。 (→ 参照)
  • 唾飲み時の違和感
    • 高所に行った時の感じ。
  • 音が聞こえにくい感じ
    • 耳閉感や圧迫感のまま続けると起こる気がする。
    • 低周波音の被害のアンケートで症状を訴える方があったとのこと。 (→ 参照)
  • 耳の痛み
    • (音が)よほど ひどい場合に起こる。
    • 低周波音に曝されると起こるとのこと。 (→ 参照)

なお、上は僕の耳の問題であり(一般の方に共通して起こるとは思えない)、過去の病気(突発性難聴)の後遺症かと推測している。そのためか、体調(「耳調」)の影響が大きく、今までの経験では冬(特に午前)に起こりやすい。血行の影響があるのだろうか?

妙なのは、耳鳴り(疲れているときや体調が悪い時に起こるようだ)と上の問題は独立なようで、耳鳴りしているからと言って上の問題が起こりやすい訳ではないことだ。いずれにしても調子は悪いのだろうが、問題の起こるメカニズムが違うのだろうか。

そして、耳鳴りは上の問題と違って演奏を聴いて居る時の嫌な感じが ほとんどないので、本稿での耳の問題には含めない。

原因(推定)

実験により、耳の問題の原因を推定した。耳に悪い順に示す。

  • キツいフィルタ → 唾飲み時の違和感, 聞こえにくい感じ, 耳の痛み, 圧迫感
    • それらの何が悪いのかは分からないが、位相の急な変化(→ : 緑が位相)や歪みの増加が問題かと想像している。
  • 超低音の過多 → 耳閉感, 唾飲み時の違和感, 聞こえにくい感じ, 圧迫感
    • 概ね50Hz以下の成分が関係しているようで、ある振幅(音量)を超えると「駄目」になるようだ。
    • 僕の耳が それらの成分に過敏なようなのと、部屋の特性(共鳴)で増幅されて耳に問題を起こすのではないかと推測している。
  • 歪み → うるさい感じ, 唾飲み時の軽い違和感, わずかな耳の痛み
    • 再生音に歪みを加えて試行したが(後述)、明らかに歪んでいるとは分からない程度の小さい歪みでも耳に影響がある。

上記の外部要因以外に、上述のように身体や耳の調子(耳調)は大きい。調子が悪い場合は、いくら対処して居ても問題は起こる。今までの経験から、どういう訳か冬の午前は調子が悪いことが分かっている。

原因が上記以外にない確証はないが、上のポイントを対処したら(後述)問題が起こりにくくなったので、他にあるとしても大きな影響を及ぼすものではないと考える。

なお、今まで不思議に思って居たのだが、ヘッドフォン(オンボードのサウンド出力に繋いでいる)や車のステレオでは滅多に耳の問題が起こらないのは、超低音が出ない(ヘッドフォンや車のステレオ(純正のナビ)は元々低音は出ないだろうし、どちらも部屋のような共鳴はない)こととキツいフィルタを使っていないため※ではないかと推測している。ただ、歪みや雑音が多いので聴き心地は良くない。

※以前、ヘッドフォンに出す音に耳を保護するようなフィルタ(コンプレッサーなど)を掛けたら、却って耳がおかしくなった記憶がある。

それから、再生音中の微小な雑音(単体では聞こえない)では耳に問題は起こらないが、嫌な音(≒「音が悪い」)に感じる。雑音の種類によっては、一見、音が良く感じることがある。

対処

今までに以下の対処をした。なお、上述のように僕の耳の問題への対処なので、一般の方に共通して適用可能なものは少ない。ただ、一般論として正しいことはありそうだ。

  • 部屋の特性補正用フィルタ(以下、補正フィルタ)の改良・調整
    • 使うソフトの選択
      • JACK(Linuxのサウンド処理系)のフィルタで耳に悪くないものは少なく、今使っているのは、"4-band parametric filter"と"High Pass Filter (One Pole)"である。
    • フィルタの特性をキツくしない。: 補正量を抑え、幅を狭くし過ぎない/傾斜を急にし過ぎない。
      • 4-band parametric filter: 最小バンド幅: 0.13, 最大ゲイン(絶対値): 9までにした。
      • High Pass Filter (One Pole): 傾きが緩いので良い。
    • 簡素化: 要素数を減らし、左右同じにした。
      • 当初は左右別で多かったが、今は4個にしている。 (→ 振幅のグラフ: 緑(HPFのカットオフ= 65Hz)を使っている)
        • ただ、今は4個でも多い気がして来た。(HPFは削れないが、)3個にできると良いが、減らすのが目的でないことを忘れてはいけない。
  • 超低域(概ね100Hz以下)の抑制
    • 補正フィルタのHPF(低域カット): カットオフ周波数: 65Hz
      • 80Hzが安全だが、少しでも低域を増やしたいので、試行錯誤でギリギリまで下げた。冬の調子で調整する必要がありそうだ。
    • スピーカー(KEF Q300)のバスレフポートを塞ぐ。
      • 最近はポートを開閉した時の特性を比較して居ないが、以前の測定では、塞ぐと100Hz辺りから下がり出し、40Hz付近で6dB程度下がるようだ。 (→ グラフ)
    • DAC(サウンドカード: ASUS Essence STX II), アンプ(BA3886, 自作)のカップリング/フィードバック回路: カットオフ周波数: 約10Hz
      • 上記の補正フィルタのHPFとスピーカー自体の低域特性(公称の下限は42Hz, 実測は30Hz辺り)やバスレフポートを塞ぐことで超低域が抑制できるはずだし、約20Hz以下は聞こえないはずなので、これは不要な はずだが、実際にはサウンドカードとアンプを直結(DC)したりカットオフ周波数が低過ぎると耳に問題が起こったため、高目に制限した。
        • DACから直流に近い変動成分が出力され、後述の可聴域外(34kHz)の雑音と同様に可聴域に影響を与える(例: ふらつき・ドリフト)のではないかと推測している。
  • PCのオーディオ(JACK, DAC)出力設定の調整
    • リサンプルしない。 → JACKとDAC(PCM1792A)は聴く演奏の主なサンプリング周波数の44.1kHzに設定している。
      • PulseAudioで最も品質が良いとされるリサンプラ(speex-float-10)を使っても音質が悪化する(少しだが、耳に問題が起こる)。
        • PCの負荷で変動する要素があるのかと想像している。
        • アップサンプルするとして、唯一使える96kHzが44.1kHzの整数倍でないのも、話を面倒にしている。
          • サウンドカードが88.2kHzをサポートしていないため、96kHzか192kHzを使うしかない。
          • PCM1792Aは192kHzでの特性が少し悪いので、余り好ましくない。
    • DACのフィルタ(sharp/slow)は余り関係なさそうだが、エイリアシングを抑えるためにsharpにした。
      • 僕は約15kHz以上は聞こえないので、エイリアシング成分が出ても聴感上の問題はなさそうだ。
      • アンプの改良前は44kHz, slowでないと耳に問題が起こったのが謎である。
        • Sharpとslowで超低域成分(直流の変動成分?)の出方が違うのかと推測している。
  • 耳に/音の悪い機器・部品の排除, その他の改良
    • 排除した機器: (DACとして)Scarlett Solo Gen3(歪みと雑音が多い), (DACとして)DEQ2496(歪みと雑音が かなり多い), 以前試用した某DAC(さまざまな雑音があった)
      • 僕にすれば、最初の2つはオーディオ用途には使えない。最後のは それらよりはマシだけど、出来が悪くて買う価値はない。
    • 排除したDACの部品: 電解コンデンサ, リレー
      • 電解コンデンサ(カップリング回路)の容量が大きくて直流の近くまで通すために耳に問題を起こすことと、電解コンデンサ自体の音の悪さを排除した。
      • リレーは余り関係ない気がする(気分の問題)。
    • アンプ
      • 排除した回路・部品: DCサーボ回路, 電解コンデンサ, マイカコンデンサ, WIMAのコンデンサ(一部)
        • DCサーボ回路は直流の近くまで通すために耳に問題を起こすことと、大出力時に超低域で歪みが増大するので排除した。
          • また、オリジナルのキットの回路では、入力にダイオードがあって歪みを生ずるので、かなり以前にダイオードも撤去した。
        • マイカコンデンサ, WIMAのコンデンサは余り関係ない気がする(気分の問題)。
          • ただ、オリジナルのキットのマイカコンデンサの値は適切でなかったし、別の容量のWIMAらしきものの音は ひどいものだった。
      • クロストークの改善
        • 片チャネルずつ特性を測るだけでは分からないが、クロストークは(高域で増大し、)雑音や歪みのように働くのではないか。
    • ※アンプとサウンドカードの改良については別稿1, 2などを参照のこと。

今回試したことと結果

これまでに目星を付けていた、キツいフィルタ, 超低音, 微小雑音と、追加として歪みについて最終的な確認をした。いずれもABX法のような客観的な比較方法でなく、自分で 状態が分かって比較している点で客観性は低い。ただ、「どちらの音が良い」という印象でなく身体的症状の発生を基準にしているので、完全に主観的なものではなく、今までに何度も同様の試行を繰り返して同様な傾向の結果を得られているので、再現性はある。

  • キツいフィルタ
    1. CalfのEQ 5bandのLPF(HSフィルタ)をキツくして試した。
      • 設定: カットオフ: 15kHz, ゲイン: -36dB(最大), Q: 0.76(ピークができない程度にした) (→ 特性: 青: 振幅, 緑: 位相)
      • 結果: 約25分で問題(唾飲み時の違和感、聞こえにくい)が出た。 → Offにしたら治った。
    2. Jack rackのC*Eq4pのHPFをキツくして試した。
      • 設定: モード1(通常のPEQと思われる), カットオフ: 65Hz, ゲイン: -30dB, Q: 1.0 (→ 特性: 赤: 振幅, 緑: 位相)
      • 結果: 約30分で問題(少し耳が痛い。あと、少し圧迫感)が出た。 → Offにしたら治った。
  •  超低音
    1. 補正フィルタのHPF(65Hz)をoffにして試した。
      • 結果: 約30分で少し圧迫感と軽い耳閉感が出た。 → Onにしたら治った。
    2. 補正フィルタのHPFのカットオフを50Hzに下げて試した。 (→ 特性(赤, 他のカットオフもあり: 65Hzは青))
      • 結果: 約30分で問題(軽い唾飲みの違和感)が出た。
      • 低域が増す感じはしたが、ブーミーな感じもした。
    3. 補正フィルタのHPFのカットオフを57Hzにして試した。
      • 結果: 約40分(途中休憩あり)で問題(少し耳が聞こえにくい)が出た。→ 65Hzに戻したら治った。
      • 考察: 問題が起こらないカットオフ65Hzとの周波数の差は8Hzと小さく、超低域の振幅の違いも高々2dBと小さいにも関わらず耳の問題が起こることから、超低域の量の耳への影響は かなりシビアなようだ。

 

  • 微小雑音: 先日試用した某DACで見られた雑音3種類を模擬した。
    1. 中域(数百Hz-1kHz辺り)に広がる雑音
      • 設定: REWの信号発生器で概ね440Hz-1.2kHzに広がるホワイトノイズ(出力: -104dBFS, BU4フィルタで500-1000Hzの帯域制限)を出して再生信号に加えた。 (→ 再生音と雑音の比較)
        • 雑音の音量: -85dBFS (A)
          • ボリュームを最大にしても雑音は聞こえない。
      • 結果: 約40分で問題らしきもの(わずかに耳が痛い)が出た。→ 元に戻したら治った(すっきりした、嫌な感じがなくなった)。
        • 他に、音が悪い感じやわずかな耳閉感や超低音とは違う良くなさを感じた。
      • 備考: この雑音の発生原因は想像できないが、回路の設計や実装(要するに「出来」)が悪いのではないかと思われる。
    2. 8kHzと高調波
      • 設定: REWの信号発生器で高調波を持つ約8kHzの正弦波(7600Hz, -83dBFS, 歪み制御で6次まで-6dBの高調波を追加)を出して再生信号に加えた。 (→ 再生音と雑音の比較)
        • サンプリング周波数96kHzで試すと上述のように、リサンプラの問題で何が悪いか分からないため、44.1kHzで試した。そのため、2次高調波までしか出ていない。
        • 雑音の音量: 約-86dBFS (A)
          • ボリュームを最大にしても雑音は聞こえない。
      • 結果: 約40分で問題らしきもの(少し耳が変な感じ)が出た。 → 元に戻したら治った。
        • 約20分で高音が ちょっとキツい感じになったが、高域が出ているようにも感じた。
        • 最終的には、耳はおかしくないものの、聴きたくなくなったので中止した。
      • 備考: この雑音の発生原因はUSB(High speed)からだと思われる。光や同軸入力では起こらなかった。
    3. 34kHz辺りに広がる雑音
      • 設定
        • REWの信号発生器で概ね30k-40kHzに広がるピンクノイズ(出力: -80dBFS, BU8フィルタで30000-37798Hzの帯域制限)を出し、Jack rackのGlame Highpass Filter(カットオフ: 33000Hz, Stages: 2)で帯域を狭めて再生信号に加えた。 (→ 再生音と雑音の比較)
        • 雑音の音量: 約-86dBFS (A)
          • 可聴域外のせいもあり、ボリュームを最大にしても雑音は聞こえない。
        • 注: 雑音が可聴域外のため、これだけはサンプリング周波数を96kHzにした。
      • 結果: 約30分で問題らしきもの(軽い唾飲みの違和感, うるさい感じ)が出た。 → 元に戻したら治った(耳が楽になった)。
        • なお、再生音なしで雑音をスピーカーから出すだけでは、数分間では問題は起こらなかった。
      • 備考・考察
        • この雑音の発生原因はACアダプタ(スイッチング電源)だと思われる。実際に、DACの負荷を変えたらピークの周波数が変動した。
        • 可聴域外の雑音が聴感や耳に影響を与えるのは信じられないが、例えば、混変調のような仕組みで可聴域に影響を与えるのではないか。
        • Scarlett Soloは適切でないノイズシェイピングのために30kHz以上に雑音が出るので、その影響も これと同様と考えられる。
        • (4/27 8:33) 書いたあとで調べたら、スピーカーの超高域(約30kHz以上)の振幅特性が増大している(40kHzで約+10dB)測定結果があった。(出典: 中央辺りの"Im Zeichen des Z"のグラフ) 物理的に疑わしいが、グラフのキャプションによれば、おそらくユニットの共振によるようだ(Google translateでの英訳: "Resonance well above the audible range.")。もしそれが正しいなら、このような超高域の雑音の影響が増大する可能性がある。
          • これで思い出したが、FocusriteのサポートはScarlettから30kHz以上の雑音が出ていることについて、「普通にあることだし、可聴域外だから全く問題ない」(概略)と返答したが、実際に こういうスピーカーがあるのだから、全く問題ないとは言えないことは確かで、連中の見識の浅さが証明できた。
          • それとは別に、僕のスピーカーの思わぬ欠点(Scarlettと同様)が今頃見つかって ちょっとがっかりした。
  • 歪み: 先日、Spofityの音量正規化を試していてい気付いた、増幅とリミッターでの歪みの影響を調べた。
    • 設定: 再生信号をJack rackのFast Lookahead limiterでリミッター付き増幅(ゲイン: 6dB, Limit: 0dB, Rel. time: 0.5s)して出力した。(→ 設定と歪みの比較: 試したのは濃紫)
    • 結果: 約25分で問題(聞こえにくい感じ)が出た。 → 元に戻したら治った(音が透き通った感じになった)。

 

追加: スピーカーのバスレフポートを閉じる影響のチェック

上に加え、低域を減らすためにスピーカーのバスレフポートを閉じているので、冬などにスピーカー内部の温度変化の影響でコーンに圧力が掛かって(オフセットと同様の効果で音が悪くなって)耳に問題が起こる可能性(下を参照)を思い付いて試したが、関係なさそうだった。

温度変化でのスピーカー内の圧力変化の試算

ボイル・シャルルの法則: P(圧力)V(体積)/T(温度)= K(一定) を用いる。

スピーカー内部の温度が14℃(T1)から7℃上がった(→ T2)場合(冬の朝を想定)の、中の空気の圧力(P1 → P2)の変化率(ΔP)は、

P1= K T1/V, P2= K T2/V (Vはスピーカーの容積で一定)
T2= T1 +7なので、P2= K (T1+7)/V
ΔP= P2 / P1= (T1+7)/T1
T1= 14なので、ΔP= (14+7)/14= 1.5倍

と、圧力が かなり大きくなってコーンに力が加わる可能性がある。

圧力変化の影響の検討

    • 圧力変化の結果、コーンが前後(上の場合は前)に動き、アンプのオフセット出力と同様にコーンの運動を制限する可能性がある。
    • ただ、「1.5倍」は大きく見えるものの、スピーカーの仕様・特性で全く影響がない可能性があるし(密閉型スピーカーでは当然のことである)、どこかから空気が漏れて(比較的短い時間で)外の圧力と同じになる可能性もある。

実際に、ポートにフィルム(PEのゴミ袋)を張って塞ぎ、暖房を停めて室温を1.3℃下げてみたが、フィルムの張りに変化は なかった。(→ 室温が下がる前, 下がった時) なので、このスピーカーは完全な密閉構造ではなく、どこかから空気が漏れていると推測した。同軸型ユニットなので、ウーハーとツイーターの隙間からか と思う。そもそも、これはバスレフ型なので密閉構造にする必要がなく、多少漏れても当然と思われる。

ただ、急な温度変化時の圧力を逃がすのは意味があると考え@、今までの完全に塞ぐタイプのプラグ(純正品 → 写真: 黒いスポンジ)の代わりに、直径5mmくらいの通気口があるプラグを作って※交換した。なお、穴が小さいため、低域の特性には ほとんど変化がなく*、聴感上の違いもなかった。

@ただ、もし効果があるとしても、次の冬まで分からない

※ストローに古いバスタオルを切ったものを巻いた。

*プラグからの漏れのせいか、左右別だと50Hz以下が少し(1-1.5dB)大きいが、両方出して測ると なぜか差がなくなる。部屋の特性の関係だろうか。

 

むすび

ひとまず、長年の謎と課題が片付いた(実際には次の冬まで分からない)。耳の問題が大きく、部屋の特性が拍車を掛けている感じだ。※ 設定や機材の問題もあるものの、おそらく、過去の病気で耳が敏感・過敏なために厳しくなっているのだろう。

※部屋に関しては吸音材で何とかなりそうに思われるが、超低域は そんなに生やさしいものではない。確か、数十Hz辺りでは数十cmの厚みが要る気がした。コンサートホールやスタジオの天井や壁の厚みとか そこに付いている拡散板(想像)を見れば分かる。

検索したら、ある波長の音の吸音に必要な吸音材の厚さの求め方として、波長/4波長が出て来た。それらで例えば50Hzに必要な厚さを考えると、波長は6.8m※であるから、前者では1.7m、後者では約7mと、全く実用的でない値となる。

※吸音材でも空気中の波長で計算して良いのか分からない。吸音材の空間で吸収するからそうなのか。逆に、空気でないものには入って行かない(反射する)か。

しかも僕の場合は50Hzどころか20Hz辺りから対応したいから、天文学的だw まあ、吸音材の材質にもよるだろうから、あくまでも例として挙げたが、普通に吸音材で共鳴(反射)を防ぐのは難しく、部屋の構造から対処する必要がある(例: 共鳴しないように、平行な壁を作らない)。

実際、後者のページに載っている吸音材の特性は、最も良いものでも300Hz辺り以下には対応していない。前者のページには無響室で使われる吸音くさび(高いらしい)の例が載っている。が、超低域では性能が悪いようだ。(ただ、グラフでは平板の吸音材の60Hz台の性能が500Hzと余り変わらないことになっており、とすると1m以上もの厚さで測ったのか、測定結果には ちょっと疑問がある。)

まあ、残りは いずれも容易には解決できないことは分かったので、とりあえずは我慢だ。

 

その後の話 (2023/4/28 10:11)

いつものように、書いたあとで分かったことなどを書く。

マイクの特性について+補正フィルタは神聖にして変えるべからず。

本文に書いたように、部屋+スピーカーの補正フィルタを減らせないか検討していて、測定用マイク(Dayton audio EMM-6)の実測特性(製品にグラフが添付されていた)を見たら、意外に平坦でないことが分かった(グラフの縦軸のスケールが荒いために平坦に見える)。

更に説明書を見たら、測定データがダウンロードできることに(今頃)気付いたので、(買ったのは随分前だけど)試したらできた。ボケていたのか、最初は測定値の表記をリニア(基準を1とした時の比)と思い込んで、最大で2倍近い山("1.9")があると思い、それだと測ったスピーカーの特性も怪しいから補正フィルタの補正量が大き過ぎるのではと思って補正フィルタを再調整しようとした。

が、データをREWに取り込むためにdBに変換するコマンドを実行したら、エラーが出て(負の値があったため)、測定値がdB表記であることに気付いた。それであれば、最大1.9dB(1.2倍)と悪くない。実際、スピーカーの特性を補正しても大きな差は出なかった。 (→ グラフ: 緑(補正前)とベージュ(補正後), 灰はマイクの特性: 左のグラフと同じもの)

それでも、マイクの特性※が山になっている辺りの補正量を下げるとか なくせるかも知れないと試したが、意外にも無理だった。: 補正フィルタはHPF以外に160, 358, 790Hzがある。まず、160と358Hzの補正量をマイクの補正として2dBくらい減らした(出力は増加する)が、耳が拒否した(こもる感じ、耳が変な感じ)。更に、補正量を元に近づけても駄目だったし、358Hzだけ調整しても駄目だった。また、元々補正量が小さい790Hzを なしにするのも駄目だった。

※同時にスピーカーの特性も考慮しようとしたが、それは部屋で測定した値に含まれているので、考慮する必要がないことが分かった。

不思議なのは、そういうのを止めて元に戻すと変な感じが治るので、なぜかは分からないが、今の補正フィルタは少しでも変えては いけないようだ。* 他に、音の好みや慣れもあるのかも知れない。

*その理由は分からないが、時間が経ってマイクの特性が変わった(平坦に近くなった?)とか、元々の補正量がギリギリで必要量より小さいのかと思う(確かに、なるべく小さくした覚えはある)。

スピーカーの超高域の共振について

本文に書いたように、使っているスピーカー(KEF Q300)は超高域に山がある(他者の測定結果がある)件について疑問が湧いた。

  • 製品仕様での記述("Frequency response (±3dB): 42Hz-40kHz")と その測定結果(40kHzでは+8dBくらい)のどちらが正しいか。
  • 超高域での増大が なぜ問題にならないか。

いろいろ調べてみたら、同じ製品ではないものの、同じメーカーのRシリーズの資料に、超高域(30kHz辺り)に山があるグラフが載っており(P. 15, Fig. 23)、ハードドームツイーターの共振をウェーブガイドで抑えている※という記述があるので、僕のスピーカーの測定結果も正しそうなことが分かった。つまり、仕様の記述が正しくなさそうだ。

実際、後継製品(例: Q350)の記述は"Frequency response (±3dB): 63Hz-28kHz"と、高域が低くなっている。上位機種(R3)では、"Frequency range (-6dB) 38Hz-50kHz"のように、(どんな音になるかは分からないが、)以前よりは正直に、増分(+XdB)を記載せずに共振する帯域を含めて書いてある。

"KEF R series 2018"中のツイーターの特性: 赤: 単体, 青: ウェーブガイド付き (From: https://assets.kef.com/documents/rseries/rseries2018-white-paper.pdf)

※グラフを見ると、僕にすれば、抑えたって まだまだひどい。共振するなら100kHz以上にしたいところだ。(高価な素材でなく)アルミだから共振周波数が低いのかは分からないが@、上位機種でも こうやって無理する理由が分からない。

@スピーカーの超高域での共振について更に調べたら、分割振動*によるものだと書いている資料があった。(参照: P.9 「5.2 Tweeter(ツイーター)」) そこに示されたグラフは 上と同様に、アルミ振動板の23kHz辺りに山がある。そして、ベリリウム%には それがない。また、柔らかいから良さそうだと思って居たソフトドームも比較的低い周波数で分割振動を生ずるということなので、一概に、金属でなければ良い訳ではなさそうで、難しい。

*詳しくないが、分割振動すると歪みになるのであって、ある周波数の出力が増大するのとは違う気がする(分割振動したら、基本波は弱くなるのではないか?)。まあ、用語は どうでも良い。

%大昔、ベリリウム(ヤマハ NS-1000M)やボロンやダイアモンドを採用したスピーカーがあって、良く分からずに憧れていたが、こういう問題に対処していたのかと今になって分かった。

結局、僕のスピーカーはハイレゾでは使い物にならないというか、使ってはいけないことが分かった。「超音波発生機」になってしまう。これに、30kHz以上で雑音が増大するScarlettを組み合わせたら最悪だ。

まあ、僕はハイレゾを使う予定が ないから実害はないが、今になってメーカーの思想が全く受け入れられないことが分かった。

あと、確証はないが、本文にも書いた、サンプリング周波数を96kHzにした時の印象が悪い問題に関係しているのかも知れない。

ハイレゾ音源やサンプリング周波数を96kHz以上にした時の問題に対処する方法を少し 考えたが、どれも今一つな感じだ。いずれにしても、サンプリング周波数が高い意味を削ぐので馬鹿らしい。

    • △ DAC出力の前にソフトのLPF(カットオフ: 20kHz辺り、以下同)を入れる。: 悪くなさそう(以前やっていた)だし、手軽に出来るが、結構低い周波数から振幅や位相に影響があった覚えがある(キツいものは音質を劣化させる)。あと、良いフィルタを選ぶ必要がある。
    • △ DAC出力とアンプの間にLPFを入れる。: 悪くないが、結構低い周波数から特に位相に影響がありそうだ。
    • × アンプの出力とスピーカーの間にLPFを入れる。: スピーカーのインピーダンスは周波数で変わるので、安定に動作させるのは難しそうだし、アンプに容量性負荷(LPFのコンデンサ)を掛けるのは良くないという話もあるので、簡単ではなさそうだ。

世の中(欧米?)には、「聞こえなければ問題ない」と考えるメーカーが結構あるのに驚く。

その点、日本のメーカーは昔から律儀・健気に頑張っており※、例えば、ヤマハ NS-5000は強い共振を防ぐため、ZYLONというものを使っている。(昔からいろいろ繰り返されて来た)そういう工夫が本当に効くのかは不明だが、イメージ的には良さそうだ。以下、上のページからの引用(太字は筆者):

We have chosen textile made of 100% ZYLON® — a synthetic fiber of exceptionally high strength, having acoustic velocity as well as the ability to reproduce the finest details of audio equivalent to those of beryllium but without a sharp resonance peak inherent in a hard material

※そういう、実益があるのかないのか分からないところで頑張るのが、欧米に馬鹿にされたり「ガラパゴス化」したり没落する原因なのだろうが、思想や技術的には間違っていない。

もし次にスピーカーを買うとしたら、こういう共振のないものにしたい。良く調べていないが、ソフトドームや(金属でない)コーンなら大丈夫そうだが、どうだろうか(上記のように、一概に柔らかい素材が良い訳ではなさそうだ)。 例えば、Fostex辺りが出していて人気のある、シングルコーンのフルレンジがいいのかも知れないな。

こういうことが、そこらの、一見何の変哲もないものが人気がある理由のひとつなのかも知れない。昔は何も知らず、安易に金属コーン・ハードドームを選んだが、僕も進歩したものだ。

 

PS. だから、僕はきっとスーパーウーハー満載で超パワフルに「ドゥオンドゥオン」鳴ってる車には乗れないだろうし、クラブとかDJ(想像)にも行けないだろうw そう言えば、昔(耳の病気以前)、ロックのコンサートに行ったことがあるが、超低域以前に耳栓がないと耐えられなかった。

とは言え、低音が嫌いな訳じゃなく(ある程度 低音が豊かな ほうが生演奏に近付く)、持論(収録された音を そのまま出すのが「いい音」)に従って可能な限り平坦に出したいとは思っている。それで、本文に書いたように、勝てないと分かっているチキンレースをする訳だ。

 

(20:43 吸音材について追記; 21:08 原因(推定), 対処に加筆, 構成を修正; 21:28 その他に補足・修正; 22:19 症状(聞こえにくい)に参照先を追加; 4/27 8:33 アンプとサウンドカードの超低域の抑制に補足, 構成を修正, 34kHzの雑音に加筆; 4/28 6:36 Q300の振幅特性のグラフを追加(引用); 4/28 10:11 その後の話を追加, 15:56 わずかに補足, 16:22-18:38 スピーカーの超高域での共振について加筆, その他を少し修正・補足)

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全く「終わった詐欺」で、気付いたら前回から2か月も経って居た。が、今度は本当で、散らばっていた道具や電子部品を片付けて すっきりした。

前回書いた残件の、自作アンプBA3886やサウンドカード(ASUS Essence STX II)のDAC部の仕上げ作業をしていたら、例によって ちょっと気に入らないことや いくつかの謎・問題が出たので、追加作業をしたり手こずったりした。

前回以降の追加作業・苦労・謎

  • アンプ本体
    • 前回から回路の変更はなく、確定したのだが、特性をチェックしたら以下の謎・問題が出た。
      • 50Hzの雑音(特に右が大きい):
        • アンプ単体では出ないので、ボリュームやカップリング回路に関係しているようだが、解決できず。 (参照: グラフ: ベージュ: アンプ単体時の右, オレンジ: ボリュームとカップリング回路を接続時の右: 50Hz辺りに山がある)
          • ボリュームなどで雑音が入りやすいのは分かるが、右だけに出ることがあるのが不思議だ。
          • ベース(放熱板兼固定台)をGNDに接続したら雑音が減るかも知れないと試したが、予想通り、効果はなかった。 (→ 写真: 左下のネジと黒いコード)
            • 単純にGNDに繋げた金属板があるだけで雑音が防げる訳ではなく、少なくとも周囲を囲う必要はあるだろうし、そうしても、アンテナになって雑音を拾ったり、変動するGNDが雑音を撒き散らすことがあるとのことだ。
        • 気に入らないものの、かなりレベルが小さく聞こえないので、保留にしている。
      • クロストークが大きい(作った時より悪化した)。: 対処できた。
        • 入力のコードと出力部(コイル, コンデンサ)が近かったこと。+残る謎の原因?
          • → コードを基板に密着させていたのを、なるべく基板から離すようにしたら、悪化は解消し、作った時より少し良くなった。
            • 更に検討したところ、推測ではあるが、基板でなくコンデンサに近いのが悪かったようだ。 (詳細は後述)
            • コイルについては、作った時も同じコードの通し方だったので違うだろう。
      • なぜか歪みが大きいことがある。: 対処できた。
        • 入出力のコードの通し方が悪かった。: なぜか、電源フィルタ付近(特にアンプの下)を通すのが駄目なようだ。
          • 作業が終わってコードを綺麗にしようとしてアンプの下に挟むと なぜか歪みが増大して、上のクロストークの改善作業で随分遠回りした。
          • → コードをアンプから少し離すようにした
      • 超高域での左右の歪みの差・左の歪みの増大 (参照: グラフ: 超高域での青系(左)と赤系(右)の差):
        • 電源の弱さ・経路の非対称性、基板の非対称性、LM3886(アンプIC)の個体差によるのではないか。
        • 出力に応じて歪みが増大し続ける訳ではなく、実用上の問題はないので保留とした。
      • 両チャネルで大出力時の高域での歪みの増大 (参照: グラフ: 実線: 片チャネル, 点線: 両チャネル):
        • 電源の弱さかも知れないが、高域なので違う気がする。
          • 上の問題(左右の歪みの差)の対処の試行でも分かったが、電源ではないのかも知れない。
        • 増大した状態でもひどい値ではなく、LM3886のデータシートの値に近いため、大きな問題ではないと考えている。
      • 左右のカットオフ周波数(高域)の差: なぜか右が30kHzくらい低くなった。: 対処できた。
        • 右の測定用出力を取リ出す位置を間違えていた。。。 → 修正したら直った。
          • 本来の出力の手前にあるZobelフィルタの抵抗とコンデンサの間から取っていた。 (参照: 回路図: 右端の"Out A/B"から取るべきところを、その少し左の"AltZobel"の右辺りから取っていた。)
          • 超高域(約30kHz以上)ではZobelフィルタが効き出して流れる電流が増え、そのために信号を取り出している点の電圧が下がるために、カットオフ周波数が下がったように見えたと考えている。
    • その他の作業
      • 交換後のコンデンサが結構大きく、また、並列接続などで数が多くて取り付け強度に不安があったので、ハリ玉と ひっつき虫の混合物(またはブルタック)で止めて補強した。 (→ 写真: 白いもの)
        • それらは熱で柔らかくなるが、作った時に温度センサをLM3886に固定するのに付けたブルタックが問題なさそうなので、大丈夫そうだ。
          • ただ、夏に状態を確認する予定だ。
        • また、余り期待しては居ないが、フィルムコンデンサが振動するのが良くないようなので、多少は防振できそうだ。
      • 同様に、クロストークの改善(上記)のために入力のコードを浮かせたため、基板に半田付けしている部分が力に弱いので、ハリ玉などを付けて動きを制限して補強した。 (→ 写真: 白いもの)
      • LM3886をベース(放熱板兼固定台)に固定する押え板をDVDケースを切ったもので作り直した
        • それまではPCケースのベイのトレイのレールを加工したものを使っていたが、厚くて基板の配置が不便なので作り直すことにした。
        • LM3886はネジ止めする部分が薄いので、そこにも板を密着させて押さえる力を高めるため、2枚重ねた。
        • 思い付きで始めたため、実寸を全く測らず、データシートのサイズと大体の想像で作ってしまったが、結束バンドを通す切り欠き部を調整したのと上記の重ねた部分以外は問題なかった。
        • DVDのケースの素材(PP)の耐熱性が気になったが、調べたら大丈夫そうだった。
      • 最終的な特性の測定時に、なるべく「綺麗」な特性を手軽に測りたかったので、アンプ基板に測定用出力コネクタを追加した。 (→ 写真: 下部に出ているコードとコネクタ)
        • その接続先(右チャネル)が誤っていて、上記の左右のカットオフ周波数(高域)の差の問題が起こった。。。
        • コネクタに測定用ピンコードを付けることで、簡単に測定できるようになった。
      • 同様に、最終的な特性の測定時に、なるべく「綺麗」な残留雑音を手軽に測りたかったので、アンプの入力をショートするピンプラグを作った。 (→ 写真: 上・中)
        • 同様に、ASUSのADCの入力をショートするミニプラグも作った。 (→ 写真: 下)
        • どちらも、手持ちの「使えない」部品でテキトーに作った。
    • 改良後の回路図 (入力部(下記のカップリング回路とボリューム)を含む)

改良後のBA3886の回路図 (入力部を含む)

  • カップリング回路 (ASUSとアンプを接続する部分)
    • カットオフ周波数が少し低いためか、わずかに耳に問題が起こりやすい感じだったので、少し高くした。
      • カットオフ周波数(後段の抵抗が90kΩの場合の理論値): 約4Hz → 約5.4Hz
      • アンプと組み合わせた場合(実測値): 約7.0Hz → 約9.4Hz
      • コンデンサの容量: 0.44μF → 0.33μF
        • 0.22μFと0.22μFx2個直列を並列接続した。
          • 合成容量= 0.22 + 1/(1/0.22 + 1/0.22)= 0.33
      • 高くなったとは言え わずかな差(約2.4Hz)なので、実は耳の調子の問題だったのかも知れず、本当に効果があったのかは分からない。
    • 正式版を作ったあとに、アンプ同様にクロストークが大きい落とし穴が見付かった。
      • ケースに入れたため、左右チャネルのコンデンサが平行に密着して干渉するようなので、約90°に配置し、GNDに繋いだ網線(VGAケーブルのもの)を間に入れて隔離(シールド)したら改善できて、最終版となった。
      • ※変遷を おまけに載せた。
    • なお、本アダプタのコンデンサをASUSのカップリングコンデンサにする(置き換える)ことも考えたが、ASUSもアンプも接続先や構成が変わる可能性があり、その時にはコンデンサの容量を調整する必要がある可能性があるため、それが容易な外付けにした。
  • ASUS (サウンドカード, DAC)
    • 新たな問題はなく、正式なDC出力化とそれに伴う電源off時のポップ音の防止のための改造をした。
    • 改造の目的・期待する効果・概要
      • 出力のカップリングコンデンサ(220uF, 電解)の音質への影響の排除
        • コンデンサの排除 → 出力のDC化
      • LPF出力から出力端子までの間の部品の音質への影響の排除
        • 出力抵抗(100Ω), コンデンサ(容量不明), その他(抵抗?)の排除
      • リレーの接点(3個/チャネル)の音質への影響の排除
        • 出力切り換え用, ミュート用の接点の直結化
      • 出力のDC化に伴う電源on/off時のポップ音の防止
        • 改造後もミュート機能が働くようにした。
    • 改造前後の回路図

ASUSのDAC出力の改造内容の回路図(関連部分のみ, オリジナルは推定): 上: 改造前(オリジナル), 下: 改造後

    • 改造箇所の写真

作った時(2021/6)・前回(2023/2)からの変化

特性は作った時と ほとんど変わりない(悪化したものはある)が、音は確かに良くなっている(主観的印象)。それに加え、以前から書いている、耳の問題(耳閉感)が起こりにくくなった。

  • 特性の違い
    • 良くなったもの: 歪み率(特に大出力時の超低域(参照: 改良前: 30Hz以下で増大 → 改良後))とクロストーク(少しだけ)(参照: 改良前改良後)
      • 比較
        • 歪み率 (20Hz, 約8W, 片チャネル出力): 約1/7になった。
        • クロストーク (L→RとR→Lの平均): 1-2dB程度減った。
      • 歪み率はDCサーボ(の作りの悪さ)による。クロストークは上述の入力のコードの引き回しが大きかったようだ。
    • 悪くなったもの: 振幅(低域の下限が少し高くなった)と位相(低域(100Hz以下)のズレが大きくなった)
      • 比較
        • 振幅特性: 下限が約6倍になった。
          • 作った時 (入力: DC): 3Hz-20kHz※: +0, -1.1dB
            • ※サンプリング周波数44.1kHzで測定したため、上限が正しく測れなかった。
          • 改良後 (カップリング回路接続時(入力: AC)): 17Hz-42kHz +0, -1dB
        • 位相 (30Hz): ズレが約8倍になった。
      • 悪化したのはDCサーボを止めてコンデンサ(カップリング, フィードバック)にしたためで、予期したもので異常・問題ではない。
      • なお、グラフでカップリング回路+ボリューム(水色, ピンク)の高域の特性が悪いのは、ボリューム※に起因する。ボリュームの寄生容量が関係しているのかと推測している。
        • ※カップリング回路単体の特性を測りたかったが、後続に約90k-100kΩの抵抗がないとカットオフ周波数(低域)が変わってしまうので使った。
  • 音が良くなったと感じる原因: 定かでない。
    • ASUSの出力のカップリングコンデンサ(電解コンデンサ)とアンプのDCサーボを撤去したのが一番大きく、次は上記のクロストークの改善※だと推測している。
      • ※クロストーク悪化の原因の、コードを基板に密着させて固定したのが いつからかは、調べないと定かでないが、その時に音が悪くなったが気付かず、今回直して良くなったと推測する。
        • ↑過去の写真を調べたら、作った時(2021年)には既にコードが基板に近い状態だった※ことが分かった。
          • ※当時はアンプ基板の隣にサーボ基板があったため、スペースが狭くてコードを浮かせられなかった。
        • だから、作った時からクロストークは悪かったようだ。確かに、作った時に書いた資料での結果は悪かったが、2022年の更新版の資料での結果(上を参照)は それほど悪くない。 → まだ他に謎があるのかも知れない。
          • 更新版でクロストークが良くなった経緯を調べたら、実は最初から悪くなかった。
            • 今回、特性を比較する時に参照した資料(PDF版)が古かったため、良くないクロストークが載っていて最初は悪かったと思って居たが、(このブログにも載せているように、)正式版の資料(Zim)では正しいクロストークになっている。
          • 結局、クロストークは元々悪くなかったのに、今回の改良時に一時悪化したようで、それが謎である。
            • フィードバックコンデンサ(左チャネル)や高域ゲイン抑制用コンデンサ(右チャネル)の直近に入力のコードを通したのが、良くなかったのかも知れない。 (→ 参照: 入力のコード(黒)がフィードバックコンデンサ(茶)や高域ゲイン抑制用コンデンサ(赤)に接して通っている。)
    • また、(以前の稿に書いたように、)カップリング, フィードバック, 超高域のゲイン抑制回路に使うコンデンサの品種を、可能な限り聴感が良いものに選別・交換したのも効いたと思う。
      • Zobelフィルタでも選別したものに交換したが、効いているかは不明。
  • 耳の問題が起こりにくくなった原因: 超低域(概ね10(-30)Hz以下の帯域と推測している)の変動(ゆらぎ)が減ったためと推測している。
    • 超低域が「出過ぎる」 ASUSの出力のカップリングコンデンサやDCサーボを撤去し、カップリング回路やフィードバック回路を調整することで超低域を抑制した。

実際に聞いてもらって説明しないと音の違い(客観的には「良くなった」とは言えない)を示すのは難しいが*、なるべく有名で幅広い手段で聴けそうな演奏で、以前との違いが顕著※と感じた例を示す。全般的には、高い小さい音や余韻の響きに違いが出やすい印象だ。

*しかも、改良前の音は出せないから説得力がない。

※「顕著」とは言っても かなり些細な違いでしかないので、全く差が分からない可能性はある。 (「分かるかなぁ、分かんねえだろうなぁ」の域?w)

なお、YouTubeでは聞こえ方が違って分からないものばかりなので、Spotifyか他のサービスかCDなどを参照されたい。

  • A Walk In Taormina (Eric Serra, 1988): 低音のパーカッションやオルガンの響きが それまでと全然違って聞こえる。
    • 一番違いが大きく感じるものだが、この表現では客観的には違いが分からない・・・
  • 夢先案内人 (山口百恵, 1977): 右でほぼ通して鳴って居る、すごく小さいシンバルとかハイハットみたいな「シャッ」という音が聞こえた。 (4/13 11:16)
  • Day Tripper - Remastered 2015 (The Beatles, 1965): イントロのギター(左側)の、弦が少し かすれるような音(ピックで弦が擦れる音?)が聞こえるようになった。
  • Drive My Car - Remastered 2009 (The Beatles, 1965): 上と同様に、イントロの小さいギター(左側)の かすれるような音が聞こえるようになった。
    • これもYouTube版では聞こえ方が違う。
  • 風立ちぬ(SEIKO STORY〜80's HITS COLLECTION〜) (松田聖子, 1981): 時々左で小さく「シャンシャン」と連打されるパーカッションが はっきり聞こえるようになった。
  • Urgent (Foreigner, 1981): 時々(例: 42秒から)左で鳴る、変わった音(パイプを叩いてるような音)のパーカッションが聞こえるようになった。
    • YouTube版では聞こえ方が違い、上の音は はっきり聞こえる。なお、公式版は音が悪くて駄目。

まとめ

いろいろ謎は あるものの、とりあえず片付いた。改良の効果なのか、耳の問題の緩和のためにPCからの出力に入れているHPFのカットオフ周波数を少し低く(80Hz → 65Hz)して、超低域を増やしても※大丈夫なようだ(確認中 → OKだった。ただ、実際には超低域は減っていた。詳細は下を参照)。

※実際には、そうしても低音が増すと感じることは なく(部屋の特性のため、低域に出にくい帯域がある)、気分の問題である。チキンレース的な「どこまで行けるか!?」のようなものだw

これで前回書いた残件の2/3が終わり、最後に残った、(そもそも やっていた、)(再生)音による耳の問題の原因調査の続きが ようやく(?)再開できる(けど面倒だ・・・)。

 

その後

(4/18 15:45) HPFのカットオフ周波数を以前より少し低くした65Hzで しばらく聴いてみて大丈夫だったので、スピーカーでの特性を測ってみたら、予想以上に「いい感じ」だった。

というのは、なぜか、前回に比べて低域(60Hz以下)が少し(30-50Hzで約2dB)下がったのだ。※ (→ グラフ: 灰: 前回, 緑: 今回) しかも、カットオフ周波数を少し上下させると30Hz辺り*が前回と同じくらいに大きくなるので、期せずして この部屋の特性に最適になったようだ。

※理論的には、HPFのカットオフ周波数を下げると低域が大きくなるはずだが、部屋の特性やフィルタ間・スピーカー間の相互作用(位相?)が関係しているのだろうか。

*この辺り以下の超低音が耳に問題を起こすと考えて、下げようとしている。

偶然だとは思うが、聴感(耳の問題の起こりにくさ)も考慮して65Hzにしたのが合っていた。また、まとめに書いたように、これで低音が増すと感じなかったのは実際にそうだったので、それなりに耳が正しいのかも知れない。

スピーカー(+部屋)の音の特性を測定した。: 灰, 青, 赤: 前回(2022/12/15, カットオフ周波数: 80Hz); 緑, 薄青, ピンク: 今回(同65Hz) (それぞれの線はL+R, L, Rの順)

 

(4/24 9:04) 昨日、HPFのカットオフ周波数でも「チキンレース」をしたw 別件(再開した耳の問題の原因調査)の途中で、ちょっと思い付いた。カットオフを下げると低域が増すかも知れない(→ 比較グラフ)以外に、補正フィルタによる低域の位相の変化(→ 位相のグラフの最高と最低の差)を減らすことができることが分かったからだ。位相の変化を減らすと音が良くなる根拠はないが、そういう気がするではないか。

カットオフ周波数を20-80Hzで変えて50Hz以上での位相の変化量を比較したところ、60Hz辺りで最小になるようで、この点でも、元々の設定の(、耳で決めた)65Hzは正しかったようだ。

が、「少しくらい下げて(低域を増して)も大丈夫なんじゃね?」という悪魔の囁きが聞こえて、カットオフを50, 55, 57.5Hzで聴いて試した。: 確かに低域が増して聞こえたが、50Hzにした場合はブーミーに聞こえることがあった。だから、部屋の特性(共鳴)で、超低域を多く出すと増強されてしまうのかも知れない。

更に、超低域が増強されるためか、いずれでも耳が駄目だった(例: 軽い唾飲み時の違和感、少し耳が聞こえにくくなった)ので却下して、元の65Hzに戻した。

なかなか敏感・過敏だ。でも、耳に再現性があることが確認できた。そして、今回も思い付きは失敗した。。。

 

付録: 代替カップリング回路(AltCC)評価用アダプタについて

この作業の初期に、ASUSのカップリング回路の代わりを試行錯誤する(主にコンデンサを取り替えて試す)ために、2種類のアダプタを作った。1つは普通の大きいコンデンサ用(#1)、もう1つはチップコンデンサ用(#2)である。以下に簡単に説明する。

#1: このアンプを作る時に買ったものの使わなかったスピーカー保護回路の基板と部品(ターミナル)を流用した。: カップリング回路を構成するコンデンサや抵抗をコード用のターミナルにネジ止めするようにした。

なお、基板のパターンや穴の都合でコンデンサ用のターミナルを付けられる場所に制約があり、入出力の左右が逆になった。

#2: チップコンデンサは小さい(1-2mm角)ため容易に取り替えられない※ので、試すコンデンサを基板に半田付けし*、それぞれに入力を繋ぐためのピン(ポスト)を立てておき、入力用コードに付けたジャックを試したいコンデンサに対応するピンに挿すことでコンデンサを選択できるようにした。 (→ 写真: 上側)

※チップにリード線を半田付けして脚を付けることで、普通のコンデンサ同様に交換することも考えたが、脚からチップに力が掛かって破損する可能性があったので止めた。

*1種類(PMLCAP)は あとから付けたのだが、なぜか間違って裏面に付けてしまった。 (→ 写真: 左寄り上下の4つの紫・銀色の四角)

それぞれのコンデンサは2個ずつ実装されているので、入力用コードを2本のピンに繋ぐことで2倍の容量で試すことができる。また、少し工夫して2個のコンデンサを直列接続にすれば、1/2の容量で試すことができる。

なお、基板に半田付けした場合、いずれかのコンデンサを正式に使う時に再利用できない※が、基板ごと使うつもりで居た。

※半田付けしたものを基板から剥がすと熱で破損する可能性が高いので、無理だ。

以下に写真や回路図を示す。

使ってみて分かったのは、これらは確かに便利でミノムシクリップなどよりはずっと安定だが、(半田付けに比べると)ターミナルやポスト・ジャックの接触が今一つなせいか、雑音が入りやすかった。また、#1は何度もコンデンサをターミナルに(キツく)付け外しして力が掛かったせいか、最後には右チャネルが断線してしまった。

だから、本来は毎回コンデンサを半田付けして試すのが一番良いが、何度も繰り返すとコンデンサも基板も駄目になってしまうから、難しいところだ。

他に、良くあることだが、入出力のコードも切れやすかった。コードが動きにくいようにベースに固定して居たが、それでも半田付けした部分が折れてしまう。試行用なので そこら辺にあったテキトーなコードを使ったのだが、硬かったのが良くなかった。硬いコードは大嫌いだ。

 

おまけ

作業で思ったこと

  • 今まで ない方が・なくても良いと思って居た、パワーアンプの前のプリアンプとかバッファアンプの必要性が分かった気がする。
    • パワーアンプの入力にボリュームやカップリングコンデンサ(CC)がある場合、音源(DACなど)の出力の構成(例: カップリングコンデンサ)によっては周波数特性(特に低域)が変わることがあるため。
    • → バッファ(プリ)アンプのあとにボリュームやCCを付ければ影響がなくなりそう。
      • ただ、バッファの入力を どうするかが問題かも。: DC? 入力抵抗は なしじゃないと無意味?

 

今回の改良関係の費用

  • 約8500円 (通販4回)
    • 送料抜き: 約7200円
      • 実際に使った分: 約2000円※
      • ※コンデンサを「取っ替え引っ替え」、買っても使わなかったりしたため、効率は30%未満と悪い。

 

正式版カップリング回路アダプタの変遷

本文に書いたように、一旦出来てからクロストークの問題が発覚したため、配置などを試行錯誤した。その過程の写真を載せる。

いつものように、作業中と終了後の作業机の比較

ボツ(未使用)写真集

 

(4/11 6:10 ASUSの改造内容の回路図のPCM1792Aの出力-I/Vを修正, 少し修正・加筆; 7:58 おまけのレイアウトを修正, 若干加筆; 11:40 アンプ(入力部を含む)の回路図を追加, 回路図をPNG形式に変更, その他の作業などを追加・加筆, 写真を追加, レイアウトを改良; 12:25 少し補足; 13:44 ボツ写真を追加; 15:12 入力のコードの通し方やクロストークの変化の経緯を調べた結果、その他を追記; 4/12 8:20 ボツ写真を追加, 作った時との特性の比較を追加; 4/12 12:26 代替カップリング回路(AltCC)評価用アダプタについてを追加, 13:24 正式版カップリング回路アダプタの変遷を追加。とりあえず、この稿も完成。; 4/12 18:12-21:07 少し加筆・修正他; 4/13 11:16 聞こえ方が違う例に「夢先案内人」を追加; 4/15 13:24 ボツ写真を追加; 4/18 15:45 スピーカーの特性の測定結果を追加)

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先日、Spotifyアプリを現行版に切り換えた。アンプなどの改良の効果か、以前試した時に起こった耳の問題が起こらず安心していたのだが、別の問題が発覚した。それは、音量正規化をonにしているのに、他より小さく聞こえる曲(演奏)があることだ。

実は少し前から気付いていて、その時に調べたのだが、正規化しても演奏ごとの音量に ある程度の幅ができることや、主観的な差(音の作りで聞こえ方が違うのと耳の調子)ではないかと思って居た。しかし、今日、TOTOの"Africa"が明らかに小さく聞こえたので、ebumeterというプログラムで音量(ラウドネス)を測ってみた。比較のため、普通の音量に聞こえるELOの"Don't bring me down"も測った。以下にIntegrated loudness("I")を示す。なお、アプリの音量正規化のモードは"Normal"である。

  • Spotifyの音量正規化Normalでの音量(ラウドネス, LUFS)
    • Africa: -22.8
    • Don't bring me down: -17.0

両者の差は5.8 LUFS(dB)と2倍近く、Africaが小さく聞こえるのも無理はない。

参考までに、"Africa"の正規化offの場合と旧版Spotifyと別の再生アプリ(gmusicbrowser, GMB)での正規化なしでの音量(ラウドネス, LUFS)を示す。

    • Spotify(新版, 音量正規化: off): -22.8
    • Spotify(旧版, 音量正規化: Normal): -17.6
    • GMB(音量正規化: off): -15.2

不思議なことに、正規化をoffにしても同じ音量となった。これは、正規化をonにしているのにonになっていないように感じたことに合っている。

旧版での"Don't bring-"の音量は測定していないが、新版と同じとすれば 音量が揃っているので、聴感に合う。それから、メディアやバージョンが異なるせいか(手持ちはBlu-spec CD, Spotifyは無印)、GMBでの音量はSpotifyより大きい。

アプリの設定を いろいろ変えて試したが、効果はなかった。それで、アプリにバグがあって、"Normal"モードでは正規化されないのかと思った。

それで、(別の理由で以前やっていたように、)全体的に音量が小さいQuietモードの出力をJACKのアンプで増幅して音量を上げるようにしてみた。すると、どういう訳か、耳に問題(軽い耳閉感)が起こった。原因は、ピークの大きい演奏を増幅すると、ピークがオーバーフローしてクリップして音が歪むからではないかと推測している。だから、Quietモードでも増幅しなければ良さそうなことが分かった。

それで更に、そもそも どういうことか検討したら、音量が小さい演奏があるのはアプリのバグではなさそうなことが分かった。: Spotifyの音量正規化に関する資料を良く読み、試しにゲインなどを計算したら分かった。以下に重要な箇所を引用する(太字は筆者)。

Positive or negative gain compensation gets applied to a track while it’s playing.

    • Negative gain is applied to louder masters so the loudness level is -14 dB LUFS. This lowers the volume in comparison to the master - no additional distortion occurs.
    • Positive gain is applied to softer masters so the loudness level is -14 dB LUFS. We consider the headroom of the track, and leave 1 dB headroom for lossy encodings to preserve audio quality.

Example: If a track loudness level is -20 dB LUFS, and its True Peak maximum is -5 dB FS, we only lift the track up to -16 dB LUFS.

上の例(Example)の計算を細かくすると、以下になるだろう。

本来のゲインG= 基準音量 Ref(-14) - Loudness(-20)= 6 dB
Gで増幅した場合のヘッドルーム H= TruePeak(-5) + G(6)= 1dB (オーバーフロー → クリップ)
確保したいヘッドルーム H'= -1dB なので、修正ゲイン G'= H'(-1) - TruePeak(-5) = 4dB
修正後の基準音量 Ref'= L(-20) + G'(4)= -16 LUFS:上に合う

それで、問題の"Africa"(True peakは推定-0.6dBFS)では どうなるかと言うと、

本来のゲインG= 基準音量 Ref(-14) - Loudness(-22.8)= 8.8 dB
Gで増幅した場合のヘッドルーム H= TruePeak(-0.6) + G(8.8)= 8.2dB (オーバーフロー)
確保したいヘッドルーム H'= -1dB なので、修正ゲイン G'= H'(-1) - TruePeak(-0.6) = -0.4dB
修正後の基準音量 Ref'= L(-22.8) + G'(-0.4)= -23.3 LUFS: 元の音量-22.8 LUFSとほとんど変わらない。

と、音量正規化後の音量は聴感や実測した音量(LUFS)に合う。更に、想像だが、修正後のゲイン(G')が負の場合には正規化しないとすると音量が変わらないので、実測値と一致する。

なお、Quietの場合も、修正ゲインG'と修正後の基準音量Ref'はNormalと同じ-23.3LUFSとなり、基準音量(-19LUFS)より小さいが、Normal(基準音量は-14LUFS)より差が小さくなる(9.3 dB (2.9倍) → 4.3 dB (1.6倍))ために目立たないのではないか。

実際にQuietで聴き・音量を実測したら、聴感も数値も見事に揃った。実測の音量は以下である。

  • Spotifyの音量正規化Quietでの音量(ラウドネス, LUFS)
    • Africa: -22.8
    • Don't bring me down: -22.0

また、別のレベルメータで調べたところ、クリップしていない(最大値が0dBFS未満)ことも確認した。

そのためか、今のところ耳の問題も起こっていないので、これで一件落着か。

とは言え、いつものように、以下のような余計な考え・こだわりはあるw

Quietにして全体の音量が小さくなったため、(本物の)アンプのボリュームを少し(5dB, 約1.8倍)大きくする必要があるが、まあ仕方ない。1.8倍は大きく見えるが、ボリュームの特性上、今までより少し(時計の5分分未満, 10°くらい?)回転が増える程度だ。

ただ、(上に書いた、以前のJACKのアンプでの増幅の理由に関係するが、)DACからの出力の精度やダイナミックレンジ(有効数字的なもの)が約1ビット減る(1/2になる)ので、その分音質は悪くなるはずだ。増幅してクリップするのと、ビット数が減るのとどちらが良いかの話になった。

丁度良いゲインと良いコンプレッサーで「うまく」増幅するといいのだろうが、JACKには良いコンプレッサーがなさそう、かつ、設定が難しいので、とりあえずは これで行こう。

あと、期待混じりであるが、ほとんどの音源は16ビット精度で、PCの内部では浮動小数点数で処理され、DACは24ビットなので、DACに出す時の変換で1ビット分が消えずに残る可能性がある。それなら音は悪くならない。せいぜい、DACから出る信号が弱いために雑音が入りやすくなる程度だ。そうであれば、コンプレッサーを入れて常に音を変質させるより ずっと良い。

ただ、そうは言っても、アナログ信号が弱いと雑音が入りやすいのは確かだ。そこで、音量正規化の時だけ(JACKで)クリップしない程度に増幅して、ちょっと大き目に出せれば(気分が)良さそうだ。

が、Spotifyが音量正規化しているかどうかは設定だけでは分からないという問題がある。: 音量正規化の設定がonでもアルバムを再生する時はoffになる、賢く便利だけど ある意味余計な お世話的機能があるためだ。

実際に音量正規化しているかの状態は外部から取得できないので、例えば再生キュー内の曲のアルバムが同じかどうかで判断(推測)することが考えられるが、面倒なうえに時間が掛かる。仮に再生開始時に判断して増幅するかどうかを変更するとすれば、演奏の先頭の音量がおかしくなる可能性がある。

と、ちょっとした思い付きでも実現は面倒だ。どうにかできないかAIに聞けば、教えてもらえるのだろうか??

例によって だらだらしたので まとめると、(現行版の)Spotifyアプリで音量正規化をNormalにしていて、やたらに音量が小さい曲(演奏)がある場合は、Quietにしてボリュームを上げれば良いことが分かった。これはLinux版だけなのか、他のプラットフォームでも有効なのかは分からない。

 

参考・補記

検索して この問題(現象)を調べたけど同じものは見付からず、Spotifyのフォーラムに類似のもの(2022)があったものの、例によって未解決だった。もしかしたら同じなのかも知れないが、分からない。

それから、これはLinux版固有なのかも不明だ。想像だが、Linux版が新しくなった時に音量正規化の方法が変わり、他のアプリ(例: スマフォ用)と共通になったのかも知れない。そうであれば、Linux版以外でも起こるかも知れない。

最初に書いた、以前新版を試した時に起こった耳の問題は、これとは関係なさそうだ。というのは、上に書いたように、Normalではクリップするほど無理に増幅しないため、音量が小さい代わりに歪みが発生しないからである。

それでは旧版(音量が揃っていた)では どうなのかは気になるところだが、(結果的にピークがオーバーフローすることになっても)増幅しているものの、うまく圧縮してひどい歪みが起こらないようにしていたのではないだろうか。これは他の再生アプリや配布される音源(例: 「海苔弁」)と同じことで、多少音を悪くする代わりに ひどいことにならないようにしているのだろう。

この問題に関して検索した時に、「(音が悪くなるから)音量正規化はoffにすべきだ」みたいな意見があったが、僕は全くそうは思わない。音量正規化をするのは音質よりも便利さを求めるからで、耳に問題が起こるほど音が悪くならない(「それなりに聴ける」)なら問題ない。

逆に、現行版のSpotifyアプリのNormalの動作は音質の点では正しいとは思うが、一貫性がなくて不便で、無意味だとすら思う。せめて、デフォルトをQuietにすべきなのではないだろうか?

てことは、つまり、Spotifyが-14 LUFSに合わせているのが おかしいってことでは? -22や-23辺りで良かったんじゃないの?? と思うが、YouTubeなどの他のサービスは-14辺りのようなので、仕方なさそうだ。

あと、平均音量を下げるとダイナミックレンジが小さくなって音質が劣化する演奏が増えそうだ。その点では、24ビットで配信をすれば まるっと解決しそうだ。

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