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(数日前にツイートしたが)先日、ステレオで音楽を聴きながら思い付いたこと。

音楽の楽しみ方は人それぞれだが、もし、繊細な音を細かく、あるいは、詳しく聞くなら、静かな部屋でスピーカーの近くで小音量で再生するのがいいのではないだろうか。

というのは、平均音量が大きいと、耳の保護機能(感度を下げる)で小さい音が隠されてしまうだろうからだ。あと、疲れるから長く聴き込めないだろう。

前者は直感であるが、調べたら、耳の構造は確かに そういう感じになっているようだ。これを書くに当たって調べた範囲(最後の参考資料を参照)を大雑把にまとめると、以下になる(もちろん、医学的に正確な書き方ではない)。

耳は、

  • 小さい音は増幅し、
  • 大きい音(が連続した場合= 平均音量が大きい場合)は感度を制限する(→ 小さくする)。

なので、平均音量が大きい・大きい音が連続した場合には、耳が自動的に感度を制限する。ということは、そういう時には細かい音は聞こえにくいのではないか。実際、参考資料1には以下のように書かれている。

静かな環境下では、この内耳感度調整が音源に対し自由に機能することができるため、非常に大きなダイナミックレンジが得られます。

上の「非常に大きなダイナミックレンジが得られ」るというのは、細かい(小さい)音も大きい音も ちゃんと聞こえるということだ。

 

その他に、今回初めて知ったのだが、プロがミックスする時には、ミキシングルームにある大小のモニタスピーカーのうち、主に小さいほう(「ニアフィールドモニター」ということなので、ミックスする人の近くに置かれているようだ)で(小音量で※)再生しているとこのと。 (→ 参考資料4)

※元の文からの想像

まさに、最初に書いたことそのものである。

おもしろいのは、上記資料4によれば、「派手に聴こえるので、ミュージシャンにとっても気分よくプレイバックが聴けるわけです。」とのことだから、まあ、大音量で楽しむのも決して間違って いないのだろう。

言ってみれば、エンジニア側で聴くかミュージシャン側で聴くかになる? とすれば、後者のほうが本来的なのかも知れない。ただ、(生でなくて)制作された音をきっちり聴くという点では前者だろう。

更に書くと、生演奏を聴くのと録音された演奏を再生するのは全く異なるし、後者で前者を再現するのは不可能だから、ステレオ・オーディオで、機械を通して聴く分には前者の立場(エンジニア側)が真っ当だと思う。

 

結局、僕は、ミキシング時(想像)のように、微細な音を正確に(一音も漏らさず(とまでは行かないが))聴きたいので そのように思っている。が、一方で、ロックミュージシャン(想像)のように、(細かい音よりも、)「身体で音楽を感じたい!」というような方は、大音量で聴くのがいいのであろう。

ただ、これはどこかで読んだ記憶だけだが、ロックミュージシャンはライブで耳栓をしているというから、本心では超大音量で聴きたい訳ではなさそうだ。まあ、耳の保護もあるんだろう。

 

ついでに書くと、ステレオ・オーディオ用の大出力アンプは小音量での特性(特に歪み)が悪いものが多いので、僕のような者には小出力で(もちろん特性の良い)アンプが必須である。

が、そういう製品が少なくて困る。

それから、ヘッドフォンやイヤフォン(もちろん小さい音で)は まさに、「静かな部屋でスピーカーの近くで小音量で再生する」のに近いから、いい機材があるならいいだろう。が、開放感がないし(この時期は蒸れる)、部屋での音の反射がないのは良いことばかりでもなさそうだし、どうしても疲れるので長時間の再生には向かないように思う。

 

参考資料

  1. FitEarブログ: 「耳の話その2:耳が持つダイナミックレンジを活かす、とか何とか…」 (2011)
  2. Audio BBS 過去録: 「聴覚の特性」 (2012)
  3. 今日の必ずトクする一言: 「嗚呼、ヒトの耳は歪んでいるのか!!のナゾ」 (2006)
  4. おとてく: 「音量を下げるとミックスの印象が変わる!?「等ラウドネス曲線」と「ラウドネス効果」を知って楽曲制作のクオリティを上げよう!」 (2017)

 

補足 (実際の音量の推算) (8/23 10:47)

「小音量」とは一体どのくらいの音量なのか示さないと具体的でないしイメージも湧かないので、考えてみた。実際に再生しているのを測れば最も具体的だが、汎用性に欠けるので、最初に使おうと思って居た等ラウドネス曲線をちょっと使ってみる。

耳は周波数によって感度の差があるが、簡単のため、1kHzでの音量を考える。

再生音量範囲を定める制約は、以下が考えられる。

  • 音量の下限を定めるもの
    • 耳の感度(聞こえる下限の音量) S
    • 部屋の騒音 Na
      • 耳の位置で測った値とする。
  • 音量の上限を定めるもの
    • 耳の上限(それ以上は耳が壊れる音量) M
    • 部屋の防音性(周囲からの苦情が来ない音量) R
      • 耳の位置で測った値とする。
  • その他
    • 再生に希望するダイナミックレンジ(≒ 再生する演奏のダイナミックレンジ) Dr

目標は、再生に希望するダイナミックレンジの音の最小の音が騒音などに隠れずに聞こえ、しかも、周囲からの苦情が来ず、耳も壊れないような、(なるべく小さい)平均再生音量Aを求めることだ。

仮にAを以下のようにしてみる。

A= (max(S, Na) + min(M, R))/2

この時の再生ダイナミックレンジDは

D= min(M, R) - max(S, Na)

となる。

※上の制約や式は今考えたものなので、果たして妥当か定かではないが、概算としては使えるだろう。

ここで 上記の制約に仮に値を設定して、平均再生音量Aなどを求めてみる。決まっていないもの(Na, R, Dr)は推測・暫定値である。

  • 耳の感度 S: 約2dB SPL (等ラウドネス曲線のグラフより)
  • 部屋の騒音 Na: 約45dB (「市内の図書館・静かな住宅地の昼」(40dB)と「静かな事務所」(50dB)の間)
  • 耳の上限 M: 約100dB SPL (等ラウドネス曲線のグラフより)
  • 部屋の防音性 R: 約85dB (「地下鉄の車内・電車の中」(80dB)と「大声による独唱・騒々しい工事の中」(90dB)の間): 実際にはもっと小さいはず。
  • 再生に希望するダイナミックレンジ Dr: 約50dB

なお、部屋の騒音と部屋の防音性の値はモノタロウ「騒音値について」を参考にした。その単位の表記は等ラウドネス曲線とは異なるが、簡単のため同じとした。

上の式で計算すると、平均再生音量A= (45 + 85)/2= 65dB※となる。これは、「静かな乗用車・普通の会話」(60dB)と「電話の着信音・騒々しい街頭・騒々しい事務所」(70dB)の間である。

※最終的に計算で使った値の単位が全部dBなので、dB SPLとの混在がなくなった。

また、この時の再生ダイナミックレンジD= 85 - 45= 40dBとなり、希望の50dBは満たせないものの、通常の部屋では妥当そうだ。

実際、Sandal Audio: 「リマスター盤の音質と、ダイナミックレンジについて」によれば、一般的な環境でリスニングする場合の妥当なダイナミックレンジは40dB程度と示唆されているので、上の結果はそれなりに妥当そうだ。

また、そのページに挙げられているCDなどのダイナミックレンジは40dB以下のものが少なくない(クラシックだと大きいものがある)ので、この程度でも悪くなさそうだ。

なお、手元に騒音計がないので、実際に僕が再生している音量が測れず※、求めた平均再生音量と比べることはできないが、実際の音量より結構大きそうな印象だ(実際は最大音量が65dB SPLくらいな気がする)。おそらく僕の平均再生音量は50-55dB SPL程度で、とても小さい音が騒音で隠れている可能性はある。

※元の音源の平均音量、DACの出力電圧、ボリュームやアンプのゲイン、スピーカーの能率、スピーカーと耳の距離などから概算できそうだが、面倒なうえに合っている確率は低そうだ。

とはいえ、そもそも部屋の特性で聞こえない帯域(低音)があるし、そこまで小さい音が録音されているかも疑問なので、騒音で聞こえない小さい音があることが致命的な問題だとは言えなさそうだ。

それに、聞こえない・大き過ぎる時はボリュームで随時音量を調整するので、僕としては全く問題ない。: そうだよ、聴いている時に音量を変えちゃいけない決まりなんてないんだ!!

確かに、演奏としては音量の一貫性がなくなってしまうが、自分で音量を変えたのなら、その情報で感覚あるいは感想が補完・調整されるはずだ。

 

PS. 最初は有名な等ラウドネス曲線から耳の特性を考えて話を進めようとしたが、どうもグラフを見てもピンと来なかった(示しているものが僕の目的と違うような感じ)ので、検索して上の資料を元にした。

PS2. 余談: 参考資料3の「今日の必ずトクする一言」は おもしろく・ためになるので、昔は結構熱心に読んでいた(それで本も買ったくらいだし、ここの書き方も影響を受けているところはある)。何度か「終わりにする」という話があった気がしたが、まだ続いているのに驚いた。今となっては(デザインなどの趣味が違うし、)すべての内容に賛成できる訳ではないが、また読みたくなった。

それにしても目が疲れるな・・・ 耳鼻科の方は眼に感心が薄い?w

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